採用動画の効果を調べると、「動画を載せると応募が◯%増える」という数字がいくつも出てきます。ところが、元の調査までたどれないものがあります。私たちの答えは、動画を置くだけでは応募は増えない、です。増やせるとしたら、求職者が応募の前に確かめたいことに短く答える動画を、応募ボタンの手前に置いたとき。そして、それが本当に効いたかは、自社の数字でしか分かりません。

「動画で応募が◯%増える」という数字は、元をたどれない

求人に動画を付けた会社と付けなかった会社で応募数を比べた公的な調査は、2026 年 10 月の時点で私たちは見つけられませんでした。ネットで見かける「志望度向上率は約 66%」「求職者の 78% が応募前に動画を見る」といった数字にも、元の調査の名前や対象が書かれていないものがあります。

確かめられるのは、求職者の意識を聞いた調査です。エン・ジャパンが 2025 年 4 月に『エン転職』の利用者 1,393 人に聞いた調査では、転職活動中に採用動画を 1 本以上見た人は 36%、採用動画を見ることで志望度に「影響がある」「少し影響がある」と答えた人は 42% でした[1]。見たい時期は「応募前」が 69% で最も多くなっています[1]。

ただし、これは影響があると答えた人の割合で、応募が増えた数ではありません。しかも同じ調査では、志望度が上がる動画の中身と下がる動画の中身の上位 3 つが、どちらも「仕事紹介」「1 日の流れ」「会社・事業紹介」の同じ順番でした[1]。同じ種類の動画が、作り方しだいで応募を後押しもすれば、遠ざけもします。

そもそも、比べるのが難しい数字でもあります。動画を作る会社は、採用にお金と手間をかけている会社です。給与を見直したり、求人の文章を書き直したりと、動画のほかにも手を打っています。応募が増えたとしても、動画のおかげなのか、ほかの何かのおかげなのかは分けにくい。

それでも、調査から分かることはあります。求職者が応募の前に何を調べ、何を知りたがっているか。そこから逆算すると、どんな動画を、どこに、何秒で置けばよいかが見えてきます。

求職者が応募の前に確かめたいのは、1 日の流れと職場の雰囲気

アイデムが 2024 年 12 月に求人へ応募した 457 人に聞いた調査では、応募の前に調べることの 1 位は「企業のホームページを探す」で 41.6% でした[2]。求人を見て気になったら、まず会社のサイトに来る。採用ページは、応募の直前に読まれている場所です。

企業のホームページ 41.6% ほかの求人サイト 27.4% 企業の口コミ 22.1% 特に調べない 22.1% 2024 年 12 月に応募した 457 人(複数回答)
応募の前に、4 割が会社のホームページを見に来ている(アイデム「仕事探しに関するアンケート調査」[2])
数値を表で見る
応募の前に調べること割合
企業のホームページを探す41.6%
複数の求人サイトで同じ企業の求人を探す27.4%
企業の口コミを探す22.1%
特に調べず、いいなと思ったらすぐ応募する22.1%

同じ調査で「働いている人に聞いてみたいこと」を尋ねると、上から1 日の流れ・スケジュール例(40.9%)、詳しい仕事内容(40.3%)、社内の活気や雰囲気(38.9%)でした[2]。どれも、求人票の文字では伝えにくいものです。

山口労働局が 2026 年 1〜2 月にハローワークを使う女性の求職者 407 人に聞いた調査も、同じ方向を指しています[3]。応募するかを決めるときに企業から確かめられると安心する情報(3 つまで)は、給与・待遇の目安の次に、職場の雰囲気が挙がりました。

給与・待遇の目安 228 職場の雰囲気 218 残業・勤務時間の実態 175 休暇の取得状況 175 回答した人数。407 人が 3 つまで選んだ
給与の目安と並んで、職場の雰囲気と残業の実態を確かめたい人が多い(山口労働局 2026 年 5 月発表[3])
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応募判断で「あると安心」な企業の情報選んだ人数(407 人中)
給与・待遇の目安228 人
職場の雰囲気218 人
残業・勤務時間の実態175 人
休暇の取得状況175 人

給与は求人票に書けます。書けないのは、雰囲気と実態のほうです。採用動画が応募を後押しできるとしたら、ここだと私たちは考えています。会社の沿革や社長のあいさつは、応募するかどうかを迷っている人の問いには答えていません。

求職者の側が働く人の動画のどこを見ているかは、姉妹サイトの社員インタビュー動画で本音を見抜く見方で、求職者に向けて書いています。採る側が読むと、動画のどこで本音かどうかを見られているかが分かります。

採用動画は何分がよい? 長い 1 本より、1 分前後を問いごとに並べる

動画の配信サービスを提供する Wistia の集計では、1 分未満の動画は、平均して動画の 52% まで見られていました[4]。同社の 2026 年の報告(1,300 万本を超える動画の視聴データ)でも、動画は短いほど最後のほうまで見られる傾向がはっきり出ています[5]。採用動画に限った数字ではありませんが、ページの途中で再生される動画という点は同じです。

求職者に聞いても答えは近く、エン・ジャパンの調査で採用動画にちょうどよいと思う長さは「1 分〜3 分未満」が 46% で最も多く、「1 分未満」の 19% と合わせると 3 分未満が 6 割を超えました[1]。

ハローワークにも、企業の PR 動画を待合室で流したり、労働局の YouTube で公開したりする取り組みがあります。佐賀労働局は 2〜5 分[6]、ハローワーク加古川は 1 分ほどの短い動画でもよく長くて 3 分ほど[7]を目安にしています。佐賀労働局は、作り込んだ映像より、自然な雰囲気の映像のほうが会社の魅力が伝わりやすいとも書いています[6]。

私たちのすすめは、5 分の会社紹介を 1 本作るより、1 分前後の動画を問いごとに分けることです。「1 日の流れは?」「一緒に働くのはどんな人?」「残業は実際どれくらい?」と分けておけば、見る人は自分の知りたいものだけを選べます。どこで見るのをやめたかも、問いごとに分かります。

置く場所は、求人の詳細ページの応募ボタンの手前

同じ動画でも、置く場所で再生される割合は変わります。Wistia の 2026 年の報告では、トップページに置いた動画は訪れた人の 24% に再生され、製品ページやお問い合わせ、送信完了のページより高い割合でした[8]。お問い合わせと送信完了のページは、どちらも 10% です[5]。

採用に置きかえると、応募の完了ページに動画を置いても、そこに来るのは応募を決めた人だけです。応募を増やしたいなら、迷っている人が通る場所、つまり求人の詳細ページで、仕事内容の文字のすぐ後と、応募ボタンの手前に置きます。

求人の詳細ページの模式図。仕事内容の文字の後に 1 日の流れの動画、応募ボタンの手前に一緒に働く人の動画を置き、応募完了ページには置かない
応募するかを迷っている人が通る 2 か所に置く。決めた人しか来ないページは後回しでよい
置き場所ごとの、見に来る人と置く動画
置き場所見に来る人置く動画
求人の詳細ページ応募するかを迷っている人その職種の 1 日の流れ、一緒に働く人、残業や休みの実際
採用ページのトップ会社を知りたい人、求人媒体から来た人職種ごとの動画への入口。会社紹介は短く
求人媒体の求人ほかの会社と比べている人媒体に動画の欄があれば 1 本。無ければ採用ページの求人に誘導する
応募完了・説明会の案内もう決めた人面接の前に見てほしい動画(辞退を減らす役)

動画を貼る形にも気を配ってください。本文の中に置くか、ページの隅に小さく出しておいて押されたら大きく開くかで、見られ方が変わります。動画で採用では、同じシナリオを本文に埋め込む形と、ページの隅に浮かせて出す形から選べるので、両方を試して数字で比べられます。

採用動画の効果は、置く前と後の 3 つの数字で確かめる

ほかの会社や調査の数字は、自社の求人にそのまま当てはまりません。自社の求人で、動画を置く前と後を比べてください。見る数字は 3 つで足ります。

  1. 置く前の 4 週間の数字を控える

    求人の詳細ページを見た人数と、そこからの応募数を書き出します。応募数を見た人数で割ったものが応募率です。求人媒体の管理画面と、採用ページのアクセス解析から取れます。

  2. 動画を置き、ほかは変えない

    同じ時期に給与や求人の文章を変えると、何が効いたのか分からなくなります。変えるのは動画だけにします。

  3. 置いた後の 4 週間で、3 つの数字を見る

    再生された割合、どこまで見られたか、応募率です。再生されていないなら置き場所かサムネイルを、途中でやめられているなら中身を、見られているのに応募が増えないなら応募ボタンまでの道筋を直します。

記録表(求人 1 件ごとに 1 枚)
数字置く前 4 週間置いた後 4 週間悪いときに直すところ
詳細ページを見た人数求人媒体の掲載・検索のされ方
動画が再生された割合(なし)置き場所、サムネイル、題名
どこまで見られたか(なし)最初の 10 秒、長さ、問いの分け方
応募率(応募数 ÷ 見た人数)応募ボタンまでの道筋、応募の手間

季節の波には気をつけてください。4 月入社に向けた時期と夏とでは、もともとの応募の数が違います。前の年の同じ時期の数字があれば、それとも比べます。応募の数が少ない求人では、4 週間の差は偶然でも出ます。1 か月で結論を出さず、2〜3 か月続けて見るほうが確かです。

動画で採用の分析では、シーンごとにどこで見るのをやめたか、どの選択肢が選ばれたかが分かります。「残業は?」の選択肢ばかり押されているなら、求職者がいちばん気にしているのはそこです。求人票の書き方を見直す手がかりにもなります。

動画も募集情報。実態と違えば、職業安定法の的確表示に触れる

職業安定法は、労働者を募集する企業に、広告などで出す募集の情報について、うその表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないと定め、情報を正確で最新の内容に保つことも求めています[9]。ここでいう広告などには、書面や電子メールのほか、放送やインターネットで公開する方法も含まれます[10]。採用ページの動画も、文字の求人と同じように見られると考えておくのが安全です。

撮る前に確かめること

繁忙期の残業がある職場で「毎日定時に帰れます」と話してもらう、辞めた社員の映った動画を出し続ける、といった見せ方は避けてください。出演する社員には、どこに、いつまで公開するかを伝えて同意をもらいます。個別の判断は、社会保険労務士や弁護士に相談してください。

法律に触れるほどでなくても、良いところだけを並べた動画は見抜かれます。エン・ジャパンの調査には、志望度が下がった理由として次のような声が寄せられていました[1]。

良いことしか言わない内容だと、どこまで正直な動画なのか分からない。

30 代男性の回答(エン・ジャパン「採用動画」に関する調査)

実態と違う動画は、法律の前に、入社してからのずれになって返ってきます。大変なところも映っている動画は、応募の数を大きくは変えなくても、合う人からの応募の割合を上げると私たちは考えています。採用動画に期待してよいのは、むしろそちらの効果です。