採用動画の作り方は、見る人(求職者)が知りたい問いを先に決め、問いごとに 1〜3 分の短い動画をスマホで撮り、字幕を付けて応募前に見られる場所に置くのが基本です。この記事では、動画を作ったことが無い採用担当の方が、1 本目を企画から公開・効果測定まで進められるように、6 つの手順と、そのまま使える台本テンプレート・社員インタビューの質問リスト・生成 AI のプロンプトをまとめました。
「作ったけれど応募が増えなかった」という方は、手順 1(問いを決める)と「失敗しがちな点」から読むと、直すところが見つかりやすいはずです。
採用動画とは?なぜ応募につながるのか
採用動画とは、求職者が応募の前後に、仕事の中身・職場の様子・一緒に働く人を確かめるための動画のことです。文字の求人票では伝わりにくい「人」と「空気」を見せられるため、合う人の応募を後押しし、合わない人の応募と入社後のギャップを減らす役割があります。
- 採用動画
- 企業が人を採用するために作る動画のこと。会社紹介、社員インタビュー、1 日の流れ、職場紹介、SNS 向けのショート動画などがある。
求職者は応募前に、短い動画を見たがっている
エン株式会社が『エン転職』のユーザー 1,393 名に行った調査(2025 年 4 月)では、転職活動で企業の採用動画を 1 本以上見た人は 36% でした[1]。採用動画を見ることで志望度に「影響がある」「少し影響がある」と答えた人は合わせて 42% です[1]。
同じ調査で、見たいタイミングは「応募前」が 69% で最多でした。長さは全年代で「1 分〜3 分未満」がいちばん多く選ばれています[1]。応募の前に、短く、見られること。これが作り方の前提になります。
求職者が知りたいのは「本音」と「実態」
マイナビの 2026 年卒の大学生への調査では、70.6% が口コミや SNS などの非公式な情報もチェックしていました[2]。「公式の情報より非公式のほうがリアルだと思うもの」は、社員の本音や不満点、残業時間、給与の実態、職場の人間関係や雰囲気の順です[2]。
数値を表で見る
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 社員の本音や不満点 | 50.6% |
| 実際の残業時間や労働時間 | 42.7% |
| 給与や待遇面などの実態 | 39.8% |
| 職場の人間関係や雰囲気 | 37.3% |
つまり、企業が公式に出す動画が「良いところだけ」だと、求職者は答えを口コミに探しに行きます。同じ調査では、企業のネガティブな情報を見て応募をやめたことがある学生が 23.2% いました[2]。採用動画は、求職者が本当に知りたい問いに、企業の側から先に答える場所だと考えると、何を撮るべきかがはっきりします。
採用動画の種類と使い分け
採用動画は大きく 5 種類あり、1 本目は「社員インタビュー」か「1 日の流れ」から作るのがおすすめです。どちらもスマホで撮りやすく、求職者が知りたい「人」と「実態」に直接答えられるからです。エンの調査でも、志望度を上げる(内容によっては下げる)コンテンツの上位 3 つは「仕事紹介」「1 日の流れ」「会社・事業紹介」でした[1]。
| 種類 | 答える問い | 長さの目安 | 置く場所 | 作りやすさ |
|---|---|---|---|---|
| 会社紹介 | 何をしている会社? どこへ向かう? | 1〜2 分 | 採用ページの最初、説明会 | 中(図や素材の準備が要る) |
| 社員インタビュー | どんな人が働いている? 本音は? | 1 人 1〜2 分 | 求人票の近く、職種ページ | 高(1 人・1 か所で撮れる) |
| 1 日の流れ | 出社から退社まで何をする? 残業は? | 1〜3 分 | 職種ページ、応募の直前 | 中(1 日つきそって撮る) |
| 職場紹介 | どんな場所で、どんな雰囲気で働く? | 30 秒〜1 分 | 採用ページ、面接の案内メール | 高(歩きながら撮れる) |
| ショート動画 | この会社を知るきっかけ | 15〜60 秒(縦) | Instagram・YouTube・TikTok | 高(ただし続ける手間がかかる) |
ショート動画は「知ってもらう」入口、採用ページの動画は「確かめてもらう」場所と分けて考えます。マイナビの調査では、就活準備で使う SNS は Instagram 32.7%、YouTube 26.0%、TikTok 12.9% でした[3]。ショートから採用ページへ誘い、そこで社員インタビューや 1 日の流れを見てもらう流れを作ると、2 つの役割がつながります。
採用動画の作り方 6 つの手順
採用動画は、問いを決める → 構成 → 台本 → 撮影 → 編集・字幕 → 公開と効果測定の順に作ります。いちばん大事なのは最初の「問いを決める」で、ここが決まれば撮るもの・話す人・長さが自然に決まります。
- 目的と、見る人の問いを決める
「だれに」「何をしてもらいたいか」を 1 文にします(例: 「営業の経験が 3 年ほどある人に、応募前に職場を知ってもらう」)。次に、その人が応募前に抱く問いを 5〜10 個書き出します。面接でよく聞かれる質問、内定辞退の理由、口コミサイトに書かれていることが材料になります。
- 構成を決める(1 本 = 1 つの問い)
問いの中から、動画で答えるものを 3〜5 個選び、1 本につき 1 つの問いに答えるように分けます。1 本の中は「結論(問いへの答え)→ 理由・具体例 → 締めの一言」の 3 段にすると、1〜2 分に収まります。
- 台本を作る(質問と要点だけ)
社員インタビューは、一字一句の原稿を読ませると不自然になります。台本には質問と「話してほしい要点」だけを書き、答えは本人の言葉で話してもらいます。下のテンプレートをそのまま使えます。
- 撮影する(スマホで十分)
1 本目はスマホで構いません。画質より音・光・手ぶれの 3 つが見やすさを左右します。
- 音: 話す人の胸元にピンマイク(スマホにつなぐ有線か無線のもの)を付ける。空調の音が少ない部屋を選び、撮る前に 10 秒だけ試し撮りして聞き直す。
- 光: 窓を背にしない。窓や照明が顔の正面か斜め前から当たる位置に座ってもらう。
- 手ぶれ: 三脚かスマホスタンドで固定する。インタビューはスマホを横向きにし、目の高さに置く。歩きながら撮る職場紹介は、ゆっくり動き、手ぶれ補正を入れる。
写り込みにも気をつけます。ホワイトボード、画面、書類に取引先や個人の情報が無いかを、撮る前に見回してください。
- 編集し、字幕を付ける
言いよどみと間を切り、冒頭の 3 秒で「何の動画か」が分かるようにタイトルを入れます。字幕は必ず付けます。音を出せない場所で見る人や、耳の聞こえにくい人にも伝わるからです。自動の文字起こしで下書きを作り、固有名詞と数字は人が直します。
- 公開し、効果を測る
求職者が応募前に通る場所(採用ページ、求人票の近く、面接案内のメール)に置きます。公開したら、再生数だけでなく「どこで見るのをやめたか」「見た人の応募率」「面接で動画の話が出たか」を見て、問いと構成を直します。
ポイント
最初から 5 本そろえる必要はありません。社員インタビュー 1 本を公開し、面接で「動画のどこが参考になったか」を聞いてから 2 本目を作ると、外れが減ります。
そのまま使える採用動画の台本テンプレートと、社員インタビューの質問リスト
台本は「問い → 結論 → 具体例 → 締め」の 4 つの欄を埋めるだけで作れます。社員インタビュー 1 本(約 90 秒)のテンプレートと、問いの種類ごとの質問リストを載せます。コピーして、( )の中を自社の内容に置き換えてください。
台本テンプレート(社員インタビュー 90 秒)
【動画の題】(例: 入社 2 年目の営業が話す「残業は実際どれくらい?」)
【答える問い】(求職者の問いを 1 つ。例: 残業は多い?)
【見てほしい人】(例: 経験 3 年ほどの営業職で、働き方を変えたい人)
【出演】(名前・職種・入社年。本人の同意を取る)
【長さ】90 秒
0:00-0:05 タイトル(画面の文字):(問いをそのまま)
0:05-0:20 自己紹介:名前、仕事、入社した年、前の仕事(あれば)
0:20-0:45 結論:問いへの答えを先に言ってもらう
(要点の例: 月の残業は平均何時間か。多い時期と少ない時期)
0:45-1:15 具体例:最近の 1 週間、1 日の中であったこと
(要点の例: 忙しい月にどうやりくりしたか、だれが助けてくれたか)
1:15-1:25 大変なこと:正直に 1 つ(良いことだけにしない)
1:25-1:30 締め:どんな人と一緒に働きたいか、一言
【確かめること】数字は人事の記録と合っているか/写り込み/字幕の誤字
社員インタビューの質問リスト(問いの種類別)
| 求職者の問い | 出演者への質問 |
|---|---|
| 仕事の中身 | 昨日、出社してから帰るまでに何をしましたか?/いちばん時間を使っている仕事は?/入社前に想像していたことと違ったことは? |
| 残業・休み | 忙しい月と落ち着いた月で、帰る時間はどう違いますか?/休みは取りやすいですか? 最近取った休みは? |
| 一緒に働く人 | 困ったとき、最初にだれに相談しますか?/チームで最近うれしかったことは? |
| 大変なこと・本音 | この仕事でいちばん大変なことは?/それをどう乗り越えていますか?/入社してから直してほしいと思ったことは? |
| 成長・キャリア | 入社してからできるようになったことは?/3 年後にどうなっていたいですか? |
| 入社のきっかけ | ほかの会社と迷ったとき、何が決め手になりましたか?/入社前に知っておきたかったことは? |
エンの調査のコメントには、「良いことしか言わない内容だと、どこまで正直な動画なのか分からない」という声がありました[1]。「大変なこと」の質問を 1 つ必ず入れるのは、そのためです。
ChatGPT・Claude で台本の下書きを作るプロンプト
生成 AI(ChatGPT・Claude など)は、問いの洗い出しと台本の下書きに向いています。一方で、事実や数字は作ってしまうことがあるので、AI が作るのは下書きまでにし、数字と本人の言葉は必ず人が確かめます。社員の名前や個人の情報は入力しないでください。台本のほかに求人票や応募者への返信も AI に下書きさせる方法は、AIエージェントで採用業務を減らす方法にまとめています。
プロンプト 1: 求職者の問いを洗い出す
あなたは中小企業の採用担当を手伝う編集者です。
次の求人に応募を考えている人が、応募の前に知りたいと思う問いを 15 個挙げてください。
「仕事の中身」「残業・休み」「一緒に働く人」「大変なこと」「成長」に分けて、
求職者が実際に口にしそうな短い言葉で書いてください。
# 求人の概要
- 職種: (例: 法人営業)
- 勤務地: (例: 福岡市)
- 働き方: (例: 月の残業は平均 15 時間、土日休み)
- 求める人: (例: 営業経験 2 年以上)
プロンプト 2: インタビューの台本の下書きを作る
次の問いに答える、社員インタビュー動画(90 秒)の台本の下書きを作ってください。
# 条件
- 一字一句の原稿ではなく、「インタビュアーの質問」と「話してほしい要点」だけを書く
- 構成は「自己紹介 → 結論 → 具体例 → 大変なこと → 締め」
- 良いことだけにせず、大変なことを 1 つ入れる
- 数字は書かずに【要確認: 何の数字か】と書く(数字は人事が記録から入れる)
- 誇張(業界 No.1、必ず成長できる など)を使わない
# 問い
(例: 入社 1 年目は、どれくらい一人で任されますか?)
下書きができたら、出演する本人に読んでもらい、「自分ならこう言う」に直してもらいます。数字の欄は人事の記録で埋め、求人票の条件と食い違っていないかを確かめてください。
自作と制作会社、どちらで作るか?
1 本目の社員インタビューや職場紹介は自作で十分で、会社紹介やブランドを伝える映像は制作会社に頼む、という分け方が現実的です。費用は、企画の量・撮影の日数と場所・出演者・編集の手間・修正の回数で大きく変わり、公的な相場の統計も見当たらないため、この記事では金額を挙げません。見積もりを取るときは、下の項目ごとに内訳を出してもらうと比べやすくなります。
| 項目 | 自作(スマホ + 編集アプリ) | 制作会社に依頼 |
|---|---|---|
| かかるもの | 担当者の時間、マイク・三脚など少しの機材 | 企画・撮影・編集・修正の費用(見積もりで内訳を確認) |
| 早さ | 撮ったその週に出せる | 打ち合わせから公開まで日数がかかる |
| 見た目 | 手作り感が出る(身近さとして伝わることもある) | 光・音・構図が整い、印象をそろえやすい |
| 直しやすさ | 条件が変わったらすぐ撮り直せる | 修正の回数や費用に決まりがあることが多い |
| 向いている動画 | 社員インタビュー、1 日の流れ、職場紹介、ショート | 会社紹介、ブランドを伝える映像、ドローンなど特殊な撮影 |
どちらを選んでも、「見る人の問い」と台本の要点は自社で決めることをおすすめします。制作会社に任せきりにすると、きれいでも求職者の問いに答えていない動画になりがちです。
採用動画で失敗しがちな点と、職業安定法で気をつけること
失敗の多くは「長すぎる」「良いことしか言わない」「見られない場所に置いている」の 3 つです。加えて、給与や働き方を動画で話すときは、求人票と同じく職業安定法の的確表示のルールに沿う必要があります。
失敗しがちな点
- 長い 1 本にまとめる: 5 分を超える会社紹介は、知りたい話にたどり着く前にやめられます。問いごとに分けます。
- 作り込みすぎ・良いことだけ: エンの調査のコメントには「作り込まれた感じや、若い方々のやらされ感を覚えてしまい応募をやめた」という声もありました[1]。
- 応募の前に見られない: 説明会でしか流さない、採用ページの下のほうに埋もれている。応募ボタンの近くに置きます。
- 字幕が無い: 音を出せない場所では内容が伝わりません。
- 出演者の同意があいまい: いつまで、どこに載せるかを書面で伝え、退職したときの扱いも決めておきます。
- 公開して終わり: 条件が変わっても古い動画が残っていると、次の注意点にもかかわります。
募集情報の的確表示への配慮
職業安定法第 5 条の 4 は、労働者を募集する人が広告などで募集の情報を出すとき、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければならないと定めています[5]。この義務は令和 4 年(2022 年)10 月 1 日施行の改正で設けられました[6]。
厚生労働省の求人企業向けリーフレットでは、対象の手段としてウェブサイトや放送(テレビ・ラジオ等)、オンデマンド放送等が挙げられています[4]。採用ページや動画サイトに載せる動画で働き方を話す場合も、同じ考え方で内容を確かめておくのが安全です。動画が対象になるかどうか、個別の表現が問題になるかどうかの判断は、社会保険労務士や弁護士、労働局に確認してください。
動画で確かめておきたいこと
問いごとに分けて選べる採用動画(分岐動画)にする方法
問いごとに作った短い動画は、1 本ずつ並べるより、見る人が知りたい問いを選んで進める形(分岐動画)にすると、必要なところだけを見てもらえます。マイナビの調査では、学生の 72.4% が企業の情報を探すときに「情報が多すぎて整理できない」と感じていました[3]。選んで見られる形は、この「多すぎる」を減らす方法の 1 つです。
- 分岐動画
- 見る人の選んだ答えによって、次に流れる動画が変わる動画のこと。
作り方は、手順 2 で分けた問いをそのまま使います。
- 入口の動画を撮る(15〜30 秒)
あいさつと「気になる話から選んでください」の一言だけの短い動画です。
- 問いを選択肢にする(3 つまで)
「1 日の流れ」「チームの雰囲気」「残業と休み」のように、求職者の言葉で書きます。4 つ以上にすると選びにくくなります。
- 選択肢ごとに答えの動画をつなぐ
手順 3 の台本で撮った 1〜2 分の動画を、それぞれの選択肢の先につなぎます。見終わったら入口に戻るか、応募・問い合わせに進めるようにします。
- 選ばれた選択肢と、見るのをやめた場所を見る
よく選ばれる問いは求職者の関心が高いところです。そこから先に撮り足し、選ばれない選択肢は言い方を変えるか外します。
「動画で採用」は、この形の採用動画を作るためのサービスです。撮った動画を「シーン」として登録し、「選択肢」でつないで 1 つの「シナリオ」にします。採用ページに埋め込め、どの選択肢が選ばれたか・どこで見るのをやめたかを確かめられます。トップページから、登録せずにデモを体験できます。
もちろん、分岐動画にしなくても、この記事の 6 つの手順と台本はそのまま使えます。まずは社員インタビューを 1 本、問いを 1 つに絞って撮るところから始めてみてください。


