撮影の前日、出てもらう社員から「台本はもらえますか。何を話せばいいか、先に書いておいてほしいです」と言われる。社員インタビュー動画の質問例を探しているのは、たいていこの場面です。

私たちの答えは、渡すのはセリフではなく質問、です。社員インタビュー動画の台本に書くのは、聞き手が何を、どの順番で聞き、答えが抽象的だったときにどう聞き直すか。本人の言葉は、台本ではなく聞き方で引き出します。この記事は、その聞き手の台本の作り方と、撮ったあとの整え方の話です。

社員インタビューの台本に書くのは、セリフではなく質問の順番

読み上げる原稿を渡すと、話す人は覚えたことを思い出しながら話すので、目が泳ぎ、声が平らになります。見る側はそれにすぐ気づきます。転職サイトの利用者 1,393 人に採用動画について聞いたエンの調査では、志望度が下がった理由に「作り込まれた印象や、若手社員のやらされ感を覚えた」「良いことしか言わないと、どこまで正直な内容か分からない」という声が挙がっていました[1]。

同じ調査では、採用動画を見て志望度に影響があると答えた人が 42% いて、志望度が上がる内容と下がる内容の上位 3 つは、どちらも「仕事紹介」「1 日の流れ」「会社・事業紹介」で同じでした[1]。何を扱うかより、どう撮れているかで結果が分かれる、ということです。上がった理由には「社員インタビューで、自分と似た境遇の人が働く様子を見た」がありました[1]。

だから台本は、聞き手のための紙にします。書くのは次の 4 つで、話す人の答えは書きません。

  • この 1 本で答える、求職者の問い(例: 残業は実際どれくらい?)
  • 聞く質問と、その順番
  • 答えが抽象的だったときの深掘りの言い方
  • 話してはいけないこと(お客様の名前、社外に出せない数字)

動画全体の構成(90 秒の時間割)と、問いの種類ごとの質問リストは採用動画の作り方の記事に載せています。ここでは、撮影当日に聞き手が手に持つ台本を作ります。

出てもらうのは、応募する人が一緒に働くことになる人

質問より前に決めるのが、だれに出てもらうかです。求人に応募した 683 人に、求人広告の従業員インタビューでどんな人の話を読みたいかを聞いたアイデムの調査では、いちばん多かったのが「一緒に仕事をすることになる人」でした[2]。

一緒に仕事をする人 49.0% パート・アルバイト 45.8% 自分と同年代の人 31.3% 求人に応募した 683 人(複数回答・上位 3 項目)
求職者が読みたいのは、入社したら隣で働く人の話(アイデム 2025 年 6 月調査[2])
数値を表で見る
従業員インタビューで話を読みたい人割合
一緒に仕事をすることになる人49.0%
パート・アルバイトで働く人45.8%
自分と同年代の人31.3%

2 番目の「パート・アルバイトで働く人」は、パート・アルバイトを希望する人に多く選ばれ、正社員を希望する人では 1 割ほどでした。正社員を希望する人では「中途入社した人」が 23.2% でした[2]。つまり、求職者は自分と同じ立場の人の話を聞きたがっています。

中途の営業職を募集するなら、話上手な管理職より、中途で入って 2〜3 年目の営業に出てもらう。配属先が決まっているなら、その部署の人に。1 人で全部を背負わせず、問いごとに 2〜3 人に分けると、1 人あたりの撮影も短く済みます。

社員インタビューの質問例 12 問と、深掘りの言い方

質問は 3 つの部分に分けて並べます。はじめの 3 問で話すことに慣れてもらい、本題の 7 問で問いに答えてもらい、最後の 2 問で締める。本題の質問には、答えが抽象的だったときの聞き直し(→ の行)を付けておきます。

【社員インタビュー 聞き手の台本】
答える問い: (例: 入社 1 年目は、どれくらい一人で任される?)
話す人:     (名前・職種・入社年。中途なら前の仕事)
撮る長さ:   20〜30 分(使うのは 1 問 30〜60 秒)

■ ほぐす(ここは使わなくてよい)
1. 今日、ここに来る前は何をしていましたか
2. いまの仕事を、家族や友人にはどう説明していますか
3. 入社して何年目ですか。前は何をしていましたか

■ 本題(1 問ずつ、答えを 1 文で言い切ってもらう)
4. 昨日(最近の 1 日)、出社してから帰るまでに何をしましたか
   → いちばん時間を使ったのはどれですか
5. 入社して最初の 1 か月で、いちばん戸惑ったことは何ですか
   → そのとき、だれに聞きましたか
6. 初めて一人で任された仕事は何で、入社何か月目でしたか
   → 任されたとき、どう思いましたか
7. この仕事でいちばん大変なのは、どんなときですか
   → 最近だと、いつありましたか。そのときどうしましたか
8. いちばん忙しい月は、何時ごろに帰っていますか
   → 落ち着いている月はどうですか
9. 最近、仕事で手応えがあったのは、どんな場面でしたか
   → それは、だれに、何と言われたときですか
10. 入社前に聞いていた話と、違ったことはありますか
   → 良いほうに違ったこと、悪いほうに違ったことを 1 つずつ

■ 締め
11. ほかの会社と迷ったとき、何が決め手になりましたか
12. この仕事に向いているのは、どんな人だと思いますか

撮る前に決めておくこと
・話してはいけないこと(お客様の名前、未発表の話、社外秘の数字)
・数字(残業・給与・休み)が出たら、人事の記録と合うかあとで確かめる
・顔と名前を出すか、出す期間、辞めたときの扱い(本人の同意を書面で)

質問 4〜10 は、どれも「最近の 1 回」か「具体的な時期」を聞く形にしています。「やりがいは何ですか」と聞くと、「お客様に喜んでもらえること」のような答えになりがちです。うそではありませんが、どの会社の動画でも聞ける言葉です。「最近、手応えがあったのはどんな場面でしたか」と聞くと、その会社でしか出てこない話になります。

質問 7 と 10 は、外さないでください。大変なことと入社前とのずれは、求職者がいちばん確かめたい話で、ここが無いと動画全体が宣伝に見えます。大変なことを理由と一緒に伝える考え方は、RJP(現実的な仕事の事前紹介)の記事に書きました。

本人の言葉を引き出す聞き方とは、「最近の 1 回」を聞くこと

台本どおりに質問を読んでも、良い答えは半分ほどしか出ません。残りは、聞き手が答えのあとに何を言うかで決まります。私たちが撮影で使っている聞き方は 4 つです。

抽象的な答えには、「たとえば?」と「そのとき、どうしました?」

「チームの雰囲気がいいです」と返ってきたら、それで次の質問に進まずに「たとえば、最近どんなことがありました?」と聞きます。場面が出てきたら「そのとき、どうしました?」「だれが?」と続けます。2 回聞き直すと、たいてい固有の話になります。使うのは聞き直したあとの答えです。

答えたあとの沈黙を、3 秒待つ

人は、1 つ答えたあとに少し間があると、自分から付け足します。「……まあ、最初の半年はけっこうきつかったですけどね」のような本音は、たいていこの付け足しに出てきます。聞き手がすぐに「ありがとうございます、では次に」と言うと、そこで止まります。うなずいて、3 秒待ってください。

答えを含んだ質問をしない

「風通しのいい職場ですよね?」「成長できる環境だと思いますか?」は、はいとしか答えられない質問です。答えも聞き手の言葉のままになります。「若手の意見が通った例はありますか」「1 年目と今で、できるようになったことは何ですか」と、事実を聞く形に直します。

聞き手は、評価に関わらない人にする

直属の上司が聞き手だと、大変なことや入社前とのずれは話しにくくなります。人事でも、別の部署の先輩でもかまいません。話す人には、撮影の前に「言いにくいことは、あとで使わないと決められる」と伝えておくと、話せる範囲が広がります。

質問は前もって渡してかまいませんが、渡すのは質問だけにしてください。答えを書いてきてもらうと、当日はそれを読み上げる動画になります。

撮り方は、音と目線と「答えを 1 文で言い切る」で決まる

社員インタビューは、スマホと三脚とピンマイクで撮れます。画質より先に効くのは、次の 3 つです。

  • 音: ピンマイクを付け、空調や電話の音がしない部屋で撮る。声が聞き取りにくい動画は、画がきれいでも最後まで見てもらいにくくなります
  • 目線: 聞き手はカメラのすぐ横に座り、話す人には聞き手の目を見て話してもらう。レンズを見つめさせると、読み上げているように見えます
  • 答えを 1 文で言い切る: 「質問の言葉を入れて答えてください」と最初にお願いする

3 つ目は、動画を問いごとに切り分けて使うためです。「残業はどれくらいですか」に「月 20 時間くらいです」と答えると、質問の声を消したときに何の話か分かりません。「この部署の残業は、多い月で 20 時間くらいです」と答えてもらうと、その 1 文だけで 1 つの場面として使えます。言い直してもらうのは、撮影中に何度でもかまいません。

話している人の手元や職場の様子(机の上、打ち合わせ、現場)を 10 秒ずつ撮っておくと、編集でつなぎに使えます。写り込みは撮ったその場で確かめます。ホワイトボードの数字、画面の顧客名、ほかの社員の顔は、あとから消すより撮り直すほうが早く済みます。

撮ったあとは、ChatGPT・Claude で文字起こしを問いごとのシーンに分ける

30 分撮ると、使えるのは 3〜5 分です。どこを使うかを決める作業が、いちばん時間を食います。ここは生成 AI(ChatGPT・Claude など)に向いています。文字起こし(多くの編集ソフトや会議ツールに付いています)を貼り、問いごとに使える部分を探させます。

ただし AI には、言い換えをさせないでください。整った言葉に直すと、本人が言っていないことになります。社員の名前や個人の情報を、そのまま入力するのも避けます。個人情報保護委員会は、本人の同意なく個人データを生成 AI に入力し、それが応答以外の目的(機械学習など)に使われると、個人情報保護法に違反するおそれがあるとして、入力する前に機械学習に使われないことを確かめるよう求めています[4]。名前は「A さん」に置き換えてから貼ってください。

プロンプト 1: 文字起こしから、問いごとのシーンを選ぶ

次は、採用動画のための社員インタビューの文字起こしです。
話している人は「A さん」、聞き手は「Q」と書いています。

求職者の次の問いに答えている部分を、問いごとに 1〜2 か所選んでください。

# 問い
1. 1 日の流れは?
2. 大変なことは?
3. 残業や休みは実際どう?
4. 入社前と違ったことは?

# 守ること
- 文字起こしの文をそのまま抜き出す。言い換え・要約・言葉の追加をしない
- 1 か所は 30〜60 秒(およそ 150〜300 文字)まで
- 聞き手の質問がないと意味が通じない部分は選ばず、「単独では意味が通じない」と書く
- 数字(時間・金額・人数)が入っている部分には【要確認】を付ける
- 良いことだけにならないよう、問い 2 と 4 は必ず選ぶ。見つからなければ「見つからない」と書く

# 文字起こし
(ここにタイムスタンプ付きの文字起こしを貼る)

プロンプト 2: 聞き手の質問が、答えを誘導していないか点検する

次は、社員インタビュー動画で聞き手が使う質問のリストです。
それぞれの質問について、次の 3 つを点検してください。

1. はい・いいえで答えられる、または答えを含んでいる質問(例: 風通しはいいですよね?)
2. 「やりがい」「雰囲気」など、だれでも同じ答えになりやすい抽象的な質問
3. 年齢・家族・出身・信条など、本人のプライバシーに踏み込む質問

当てはまる質問には、「最近の 1 回」や「具体的な時期」を聞く形に直した案を 1 つ付けてください。
当てはまらない質問は「問題なし」とだけ書いてください。

# 質問リスト
(ここに質問を貼る)

AI が選んだ部分は、必ず元の動画で聞き直してください。文字起こしの誤りで意味が逆になっていることがあります。数字が入った部分は、人事が記録と照らします。採用動画も募集の情報で、職業安定法は、虚偽や誤解を生じさせる表示をせず、求人の情報を正確・最新に保つよう求めています[3]。最後に、使う部分を本人に見てもらい、了承を取ってから公開します。

問いごとに切り出した場面は、1 本の長い動画につなぐより、見る人が知りたい問いを選べる形にすると最後まで見てもらえます。動画で採用では、切り出した場面を「シーン」として並べ、「残業は?」「大変なことは?」のような「選択肢」でつなげます。字幕も自動で付きます。

見る側の求職者は、社員インタビューを「どれだけ具体的か」「大変な話があるか」で見ています。姉妹サイトの求職者向けの社員インタビュー動画の見方を一度読んでおくと、どの答えを残すかの判断が変わります。