同じ応募者について、一次面接をした現場の課長は「5 点、ぜひ次へ」と書き、同じ日に別の枠で会った人事は「2 点、受け答えが浅い」と書いた。合否の会議では、どちらの見方が正しいかの話で 30 分が過ぎる。面接官トレーニングを考え始めるのは、たいていこういう会議のあとです。

私たちの考えを先に書きます。面接官によって評価がばらつくのは、面接官の向き不向きより、「何を見て、どの答えに何点を付けるか」が人によって違うからです。質問と評価基準表をそろえ、録画した面接を全員で採点して答えの見方をすり合わせれば、ばらつきは減らせます。そして同じ準備が、面接で応募者に逃げられることも減らします。

同じ応募者でも、別々に会った面接官の評価はそろわない

面接官どうしの評価がどのくらい一致するかは、研究でかなり調べられています。2013 年に発表された分析は、採用面接の評価者間の一致を調べた 125 の結果(合わせて 32,428 人分)をまとめたものです[1]。

一致の度合い(1 に近いほど評価がそろう)は、複数の面接官が同じ場で同じ応募者を見た場合は平均 .74 でした。ところが、別々の面接官が別々の機会に面接すると .44 まで下がりました[1]。一次面接を課長と人事で別々の枠に分けている会社は、まさに後者です。

もう 1 つ、この分析には気になる指摘があります。質問をしっかり決めた面接でも、別々の面接官が行うと、一致は予想したほど高くならなかったのです[1]。質問をそろえるだけでは、評価はそろわない。同じ答えを聞いて何点を付けるかまで、面接官のあいだで決めておく必要があります。

評価がばらつく原因は、面接官の資質より、物差しが無いこと

面接の評価がずれる典型は、名前の付いた「評価エラー」として知られています。たとえば次のようなものです。

  • 最初の 1〜2 分の印象(挨拶、話し方)で、その後の答えまで良く、または悪く聞こえる
  • 出身や趣味、前職が自分と近い応募者を高く見る
  • ハキハキ話せる人を、仕事ができる人だと受け取る
  • 迷うと全員に真ん中の点を付ける、あるいは全員に甘く付ける
  • 直前に会った応募者と比べて点を付ける

研修で評価エラーの名前を教えても、翌日の面接はあまり変わりません。人は自分の第一印象に気づきにくいからです。効くのは、気をつけることを増やすより、印象が入りこむ余地を減らすこと。つまり、何を見るか(評価する力)と、どんな答えに何点を付けるか(答えの例)を、面接の前に文字にしておくことです。

厚生労働省も、面接では職務を進めるのに必要な適性・能力を評価する観点から、あらかじめ質問項目や評価基準を決めておき、できるだけ客観的かつ公平に評価するよう求めています[2]。基準が無いまま面接官を増やすと、面接官の数だけ物差しが増えます。

構造化面接とは、全員に同じ質問をし、同じ基準で点を付ける面接

構造化面接とは、同じ職に応募した人を、同じ質問と同じ評価基準で評価する面接のことです。Google は社内の採用の手引きを公開していて、構造化面接を次の 4 つで説明しています[3]。

  • その仕事に関係のある、吟味した質問を使う
  • 応募者の答えを記録し、評価する人があとで見返せるようにする
  • 答えの例(不十分・ぎりぎり・十分・とても良い)を書いた共通の基準で点を付ける
  • 面接官を練習させ、評価の目線をそろえる(キャリブレーション)

前の節の研究と合わせて読むと、4 つめが抜けると残りの 3 つが生きないことが分かります。入社後の仕事ぶりを予測する力でも、構造化面接は採用の手法の中でいちばん高い平均値(.42)を示しましたが、作り方によって値の幅が大きいことも分かっています[4]。

全部を一度にそろえる必要はありません。軸になる質問と評価基準だけを決め、深掘りの聞き方は面接官に任せる「半構造化面接」から始めると、中小企業の一次面接でも無理なく回せます。質問の作り方は面接で聞いてはいけない質問と、代わりに聞く質問例に、力ごとの質問シートとして書きました。この記事では、その先の「点の付け方」を扱います。

評価基準表は、力ごとに 1・3・5 点の答えを行動で書く

評価基準表で決めるのは、1 つの力について「この答えなら何点か」です。「熱意がある」「論理的」のような言葉だけでは、面接官ごとに読み方が変わります。応募者の口から出てくる行動の形で書くと、面接官が同じ答えに同じ点を付けやすくなります。

下は、一次面接で使う評価基準表のひな形です。例として法人営業の新卒・第二新卒を置きました。力の数は 3〜4 個に絞り、自社の職種に合わせて書きかえてください。

【一次面接 評価基準表(例: 法人営業・新卒/第二新卒)】
面接官:        応募者:        日付:

力 1: 相手の要望を聞き出す
  質問: 相手の求めていることが分からないまま進めなければ
        ならなかった経験を教えてください
  5 点: 自分から質問して確かめた行動と、その結果を具体的に話せる
  3 点: 確かめたことは話せるが、何をどう聞いたかがぼんやりしている
  1 点: 相手や状況の話だけで、本人の行動が出てこない
  点: [  ]  根拠になった発言(そのまま書く):

力 2: 決めたことをやり切る
  質問: 自分で目標を決めて取り組み、途中でうまくいかなかったことは
  5 点: つまずいた理由を自分で考え、やり方を変えた話ができる
  3 点: 続けたことは話せるが、何を変えたかが出てこない
  1 点: うまくいった結果だけで、途中の話が無い
  点: [  ]  根拠になった発言:

力 3: 新しいことを自分で身につける
  質問: 最近、必要に迫られて自分で調べたり学んだりしたことは
  5 点: 調べ方と、それを使った場面の両方を話せる
  3 点: 学んだ中身は話せるが、使った場面が無い
  1 点: 「勉強しています」で止まる
  点: [  ]  根拠になった発言:

評価しないこと(点に入れない)
  ・話し方の上手さ、声の大きさ、緊張しているかどうか
  ・出身、家族、住まい、趣味が自分と近いかどうか

総合判定のルール
  ・3 つとも 3 点以上 → 次の選考へ
  ・1 点が 1 つでもある → もう 1 人の面接官と根拠を見比べてから決める
  ・「なんとなく良い/悪い」は判定に使わない。根拠欄が空なら点を付けない

このひな形でいちばん効くのは「根拠になった発言」の欄です。合否の会議で「なぜ 5 点か」を、印象ではなく応募者が言ったことで話せるようになります。冒頭の課長と人事の食い違いも、根拠を並べると、片方は話し方の印象で、片方は答えの中身で点を付けていた、と分かることがあります。

録画面接の設問ごとの評価シートは録画面接の導入の記事に載せています。対面の一次面接でも、録画でも、基準の書き方は同じです。

面接官の態度は、そのまま応募者の辞退の理由になる

面接官トレーニングは、評価をそろえるためだけのものではありません。面接は、応募者が会社を見る場でもあるからです。2025 年 6 月に 20〜60 代の転職経験者 525 人に聞いた調査では、一般社員・係長クラスの 49.6% が、面接を受けて志望度が下がった経験があると答えました。その理由の 1 位は「面接官の態度・印象が悪い」で 50.4% でした[5]。

横柄・威圧的、態度が悪い 35.2% 事前の情報と面接の内容が違う 24.6% 興味がなさそうな印象を受けた 20.1% 転職経験者のうち一般社員・係長クラス(複数回答・上位 3 つ)
面接官に不信感を持った理由は「横柄・威圧的」がいちばん多い(doda人事ジャーナル 2025[5])
数値を表で見る
面接官に不信感を持った理由一般社員・係長課長以上
横柄・威圧的、態度が悪い35.2%29.9%
事前情報と面接の内容に乖離がある24.6%―
興味がなさそうな印象を受けた20.1%―
質問の意図がわからない、回答が的を射ていない―28.0%
面接官のマナーが気になった―22.2%

課長以上のクラスでは、「質問の意図がわからない、回答が的を射ていない」が 28.0% で 2 位に入っています[5]。経験のある人ほど、面接官が何を確かめたくてその質問をしているのかを見ています。思いつきで質問を変える面接は、評価がぶれるだけでなく、応募者に「この会社は自分をちゃんと見ていない」と受け取られます。

反対に、決めた質問で全員を同じように扱うことは、落ちた人の受け止め方も変えます。Google の調べでは、構造化面接を受けて不採用になった人は、そうでない人より 35% 満足していました。用意した質問と基準を使うことで、1 回の面接につき平均 40 分の手間も減ったといいます[3]。

面接官の態度で避けたいことは、評価基準表の裏に書いておくと、新しく面接官になった人にも伝わります。腕を組む、メモばかりで目を見ない、時計を気にする、応募者の答えを途中で切る、前の面接官と同じことを聞く。どれも評価とは関係が無く、応募者の志望度だけを下げます。内定を出したあとの辞退を防ぐ手は、内定辞退を防ぐ方法に時期ごとにまとめました。

面接官トレーニングは、録画した模擬面接の採点から始める

面接官トレーニングの中心は、講義ではなく、同じ面接を全員で採点して点を比べることです。点がずれた場所が、そのまま話し合うべき場所になります。最初の 1 回は、半日あれば次の流れで回せます。

  1. 評価基準表を読み合わせる(30 分)

    力ごとの 1・3・5 点の書き方を全員で読み、「この言葉はどういう答えを指すか」が人によって違うところを直します。

  2. 録画した模擬面接を、各自で採点する(45 分)

    社員どうしで、応募者役が 3 点くらいの答えをする模擬面接を 10〜15 分録っておきます。全員で見て、話し合う前に、各自が点と根拠の発言を書きます。

  3. 点を出してから、理由を話す(45 分)

    点を一斉に出し、2 点以上ずれた力について、根拠の発言を並べます。先に話し合うと、声の大きい人や役職の高い人の点に寄るので、順番は必ず「点が先」です。

  4. 面接官役を交代で練習する(60 分)

    3 人 1 組で、面接官・応募者・見る人を交代します。見る人は、質問を変えなかったか、深掘りを 2 回したか、応募者が話す時間を奪わなかったかを記録します。

  5. 3 か月ごとに、実際の評価のずれを見る(60 分)

    同じ応募者を 2 人で評価した記録を並べ、ずれが大きい力を探します。基準の書き方を直すのは、このときです。

自分の面接を録画で見返すと、話していた時間や、答えを途中で切った回数が、その場の感覚と違っていることがあります。見返すときは、自分が話していた時間の割合、答えを途中で切った回数、最初の 2 分で点を決めていなかったか、の 3 つだけを見れば足ります。

応募者の面接を録画するとき

個人情報を取得した事業者は、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、その利用目的を本人に通知するか公表しなければなりません[6]。応募者の面接を録って研修に使うなら、事前に目的(評価と面接官の研修)と保管する期間を伝え、同意を得てから録ってください。研修用には、社員どうしの模擬面接を録るほうが安全です。個別の判断は社会保険労務士・弁護士に確かめてください。

面接の時間を本題に使うには、会社の説明を面接の外に出すのも手です。動画で採用では、仕事や職場を社員が話す動画を「シーン」に分け、応募者が知りたい「選択肢」を選びながら見られる形で、面接の前に送れます。面接官が毎回同じ会社説明をしなくて済むぶん、決めた質問と深掘りに時間を回せます。

評価される側が一次面接をどう準備しているかは、姉妹サイトの一次面接で落ちる理由と対策に書いています。応募者は、面接官の手元にある評価シートを想像しながら準備しています。そのシートに書かれていることが面接官ごとに違えば、準備は報われません。