案内に「選考ではありません」と書いたのに、始まって 5 分で志望動機を聞いてしまう。企業側がカジュアル面談でいちばんやりがちな失敗は、これだと私たちは考えています。
カジュアル面談は、求職者に会社を選んでもらう場です。評価はしないと約束し、会社の側が先に手の内を見せ、選考に進むかどうかは相手に決めてもらう。遠回りに見えますが、志望度が上がるのはこの形です。
カジュアル面談とは、選考の前にお互いを知るための話し合いのこと
カジュアル面談とは、選考や評価を目的とせず、企業と求職者が気軽に話して互いの理解を深める場のことです[1]。応募の前、まだ転職を決めきっていない人とも会えるのが、面接との大きな違いです。
中途採用では、もう珍しい手法ではありません。学情が企業の人事担当者に聞いた調査では、キャリア採用でカジュアル面談を実施している企業は、2024 年の調査で 36.7%、2025 年の調査で 52.4%、2026 年の調査で 52.7% でした[3][2][1]。
数値を表で見る
| 調査(公表日) | 実施している企業 | 回答数 |
|---|---|---|
| 2024 年 6 月 10 日 | 36.7% | 376 社 |
| 2025 年 5 月 26 日 | 52.4% | 338 社 |
| 2026 年 6 月 1 日 | 52.7% | 295 社 |
実施する目的は、2026 年の調査で「ミスマッチの防止」が 79.7%、「志望意欲の醸成」が 51.6%、「応募数を増やす」が 41.0% でした[1]。求職者の側も、20 代の転職希望者の 85.1% が「参加したい」(「どちらかというと」を含む)と答えています[1]。
2025 年から 2026 年にかけて、実施する企業の割合はほとんど増えていません。半分の会社がやっている以上、差がつくのは、やるかどうかより中身のほうです。
面接との違いは、評価しないことと、会社が先に話すこと
面接は会社が求職者を見極める場で、カジュアル面談は求職者が会社を見極める場です。向きが逆なので、話す人の順番も、準備するものも変わります。
| 項目 | 面接 | カジュアル面談 |
|---|---|---|
| 目的 | 会社が、採るかどうかを決める | 求職者が、選考を受けるかどうかを決める |
| 主に話す人 | 求職者 | 会社(最初の 10〜15 分は会社が話す) |
| 求職者の準備 | 履歴書・職務経歴書、志望動機 | 原則いらない。聞きたいこと |
| 終わったあと | 合否を伝える | 選考に進むかを、求職者が決める |
企業も求職者も、堅苦しくないことを求めている点は同じです。2026 年の学情の調査で、企業がカジュアル面談で意識していることは「なるべく緊張を和らげる」77.4%、「面接のような雰囲気にならないようにする」67.7%、「良いところだけでなく課題もありのまま伝える」57.6% の順でした。求職者が好印象を持つ対応も、同じ 3 つが 61.8%・53.4%・50.4% で並んでいます[1]。
「選考要素はありますか」と聞かれて言葉に詰まる会社は、運用を見直す時期です。私たちは、評価に使うなら「カジュアル面談」と呼ばないほうがよいと考えています。たとえば、話した内容で書類選考を省くかどうかを決めるなら、案内の時点でそう書けば済みます。呼び名と中身が食い違うことが、求職者の不信のいちばんの元になります。
カジュアル面談で志望度が下がるのは、公開情報以上の話が無いとき
カジュアル面談は、やれば志望度が上がるわけではありません。転職経験のある 934 人に聞いた 2026 年 2 月の調査では、65.0% がカジュアル面談で志望度が下がった経験があり、33.0% は「何度もある」と答えました[4]。
同じ調査で、志望度が下がった面談の約 66% は、内容が会社のサイトや求人票などの公開情報と同じか、それ以下だったとされています[4]。担当者は人事 40.4%、現場のマネージャー・メンバー 36.4%、経営層・役員 20.1% で、だれが出ても起きています。志望度が下がった人の 85.0% は、面談の質が高ければ選考に進んだ、または第一志望になった可能性があると答えました[4]。調査したのは採用代行の会社なので、その立場は割り引いて読んでください。それでも、「会社のサイトに書いてあることを 30 分かけて話す」面談が人を遠ざける、という指摘には私たちも同意します。
反対に、うまくいけば効果ははっきり出ます。カジュアル面談に参加したことのある 20 代後半〜30 代の 64.0% が「企業理解が進み、志望度が上がった」(「どちらかというと」を含む)と答えています[5]。
差を分けるのは、求職者が知りたいことに答えたかどうかです。同じ調査で、カジュアル面談で聞きたいことの上位は、入社した場合に自分が行う仕事内容(77.7%)、働きやすさ(67.5%)、一緒に働く社員の人柄や雰囲気(59.9%)、自分のどのような点に興味を持ってくれているか(48.2%)でした[5]。会社の沿革や事業の全体像は、ほとんど求められていません。
30 分のカジュアル面談の進め方と台本
30 分のうち、会社が話すのは前半、求職者の質問に答えるのが後半です。「何か質問はありますか」から始めると、準備してこなかった人ほど困り、結局は会社の説明を一から始めることになります。
【カジュアル面談の台本】30 分・オンライン
担当: 人事 1 人 + 配属予定の部署の人 1 人
0〜3 分 あいさつと、今日の約束
「今日は選考ではありません。合否もつけません。
お話を聞いて、選考に進むかどうかを
決めていただくための時間です」
「履歴書は不要です。メモは取ってかまいません」
3〜8 分 なぜ声をかけたのか
スカウトなら、プロフィールの
どこに興味を持ったかを、具体的に 1〜2 つ
(「5 年間の法人営業の経験」のように)
8〜18 分 入社したら、何をするか
(現場の人が話す)
・最初の 3 か月の仕事と、チームの人数
・最近あった忙しい時期と、そのときの様子
・この仕事の大変なところを 1 つ
18〜27 分 求職者の質問に答える
答えられないことは
「確かめて、明日までにメールします」
27〜30 分 次の選び方を伝える(下の節)
台本の「なぜ声をかけたのか」は、面談の前日までに、相手のプロフィールや経歴から埋めておきます。ここが空欄のままだと、求職者には「だれにでも同じ文面を送ったのだな」と伝わります。
配属予定の部署の人に入ってもらうのは、仕事の話を具体的にできるからです。「大変なところを 1 つ」は、理由と見返りと一緒に話してもらうと、正直さが伝わります。大変なことの伝え方は採用のミスマッチを防ぐ RJP の記事に書きました。
雑談のつもりでも、聞いてはいけないことは面接と同じ
カジュアル面談は、話がくだけるぶん、面接なら聞かないことを聞いてしまいやすい場です。厚生労働省は公正な採用選考のために、本籍・出生地、家族(職業・続柄・健康・学歴・収入など)、住宅の状況、生活環境・家庭環境、宗教、支持政党、尊敬する人物、購読新聞・愛読書などを、応募書類や面接で把握しないよう求めています[6]。
「ご出身はどちらですか」「ご家族は何のお仕事を」「最近読んだ本は」。アイスブレイクで出がちな質問が、ほぼそのまま並んでいます。場を和ませるなら、今日の移動や、相手が話題にした仕事の話から入れば十分です。
面談のメモも個人情報
職業安定法は、募集を行う者が求職者の個人情報を集めるときは、業務の目的の達成に必要な範囲内で、目的を明らかにして集め、その範囲で保管・使用するよう定めています(第 5 条の 5)[7]。面談のメモを選考で使うなら、そのことを案内に書き、本人に伝えてください。個別の判断は社会保険労務士・弁護士に相談してください。
選考に進んでもらうには、最後に選べる道を 3 つ見せる
面談の最後の 3 分で、次に取れる道を並べて見せます。「ぜひ選考に」と押すより、求職者が自分で選んだほうが、選考の途中で降りる人が減ると私たちは考えています。
- 選考に進む(次は何をするか、何日くらいかかるか)
- 決める前に、もう 1 人、別の社員と話す
- 今回は見送る(連絡をもらえれば、それで終わり)
その場で返事は求めず、「1 週間以内に、このメールに返信でお知らせください」と期限を決めます。そのうえで、面談の当日中にお礼のメールを送ります。
件名: 本日はありがとうございました
(会社名 採用担当)
(お名前)様
本日はお時間をいただき、ありがとうございました。
お話しした法人営業の仕事について、
お約束した資料を添付します。
面談でいただいた「〜」というご質問には、
配属先に確かめたうえで、
次のようにお答えします。(回答)
今後については、次のどれでもかまいません。
・選考に進む
(書類選考から始まり、面接は 2 回です)
・別の社員とも話してみる
・今回は見送る
(日付)までに、このメールへの返信で
お知らせいただけると助かります。
「見送る」を選んだ人には、理由を 1 つだけ選んでもらう短いアンケートを付けると、次の面談を直す材料になります。毎月見る数字は、面談をした人のうち選考に進んだ人の割合と、見送った理由の内訳です。選考に進んだ後の辞退を減らす工夫は、内定辞退を防ぐ方法につなげて読んでください。
面談の前に動画を見てもらうと、30 分を本題に使える
志望度を下げる面談の多くが、公開情報の繰り返しだったことを思い出してください。会社の概要や 1 日の流れ、オフィスの様子を面談の前に動画で見てもらえれば、30 分をまるごと、その人に向けた話に使えます。
動画で採用には、仕事・人・環境の動画から、どこからでも「話を聞いてみたい」の選択肢でカジュアル面談の申し込みのシーンに進めるシナリオの雛形があります。どの選択肢がよく選ばれたかも分かるので、求職者が面談の前に何を気にしているかの見当がつきます。動画の撮り方は採用動画の作り方にまとめました。
求職者の側は、カジュアル面談を前にして、服装や何を聞くかで迷っています。姉妹サイトのカジュアル面談の質問例と準備を読むと、面談の相手がどんな準備をして来るのかが分かります。


