一次面接の日程調整だけで、採用担当の 1 週間が埋まっていく。応募が増える時期に録画面接の導入を考え始めるのは、たいていこのときです。
録画面接は、面接官の時間をはっきり減らします。ただ、応募者の側から見ると、相手のいない画面に向かってひとりで話す選考です。私たちは、導入するかどうかより先に、どの段階で使い、何を何問聞き、どう評価し、応募者に何を伝えるかを決めておくべきだと考えています。そこを決めずに入れると、浮いた時間のぶん、辞退が増えます。
録画面接で、応募者の志望度はほとんど上がらない
録画面接(動画面接・オンデマンド面接とも呼ばれる)とは、企業が用意した質問に、応募者が自分の都合のよい時間に答えを録画して送る選考のことです。面接官は、届いた動画をあとから見て評価します。面接官と応募者が同じ時間にいなくてよいのが、オンライン会議でのライブの面接との違いです。
録画を AI が分析して点数を付けるサービスもありますが、この記事では、録画を人が見て評価する使い方を扱います。AI が評価する型や対話型の AI 面接官については、AI面接の導入ガイドにまとめました。
先に、応募者の受け止めを見ておきます。少し古い調査ですが、マイナビが 2023 年卒の学生 1,843 人に聞いた 2022 年 6 月の調査では、録画形式の面接を受けたことがある学生は 31.0% でした[1]。面接の前と後で志望度がどう変わったかを形式ごとに比べると、録画面接だけ、下がった割合が上がった割合を上回っています[1]。
数値を表で見る
| 面接の形式 | 志望度が上がった | 志望度が下がった |
|---|---|---|
| 対面式の面接 | 32.7% | 8.0% |
| ライブ形式の WEB 面接 | 23.1% | 8.9% |
| 録画形式の WEB 面接 | 5.1% | 17.4% |
録画を受けた学生のうち、録画面接が「苦手」「どちらかといえば苦手」と答えたのは合わせて 83.2% でした[1]。海外の研究でも傾向は同じで、録画面接への応募者の反応は、従来の面接より否定的になりやすいとされています[2]。
面接は、会社が応募者を見る場であると同時に、応募者が会社を好きになる場でもあります。録画面接は、その後ろ半分をほぼ手放します。だから、志望度を上げる役目は別の段階に任せ、録画面接は「最初の見極め」に絞って使うのが合っています。
録画面接は、どんな選考に向くのか?
録画面接が力を発揮するのは、応募者が多くて一次面接の枠が足りず、しかも一次で確かめたいことが数個に決まっている選考です。新卒の一次選考や、店舗のアルバイト・パートの採用が典型です。実際、「録画面接 質問」で検索の候補を調べると、カフェ・100 円ショップ・回転寿司・ドラッグストアなど、アルバイトを多く採るチェーンの名前がずらりと並びます。
| 向く | 向かない | |
|---|---|---|
| 応募の数 | 一次面接の枠が足りないほど多い | 月に数件。日程調整の手間が小さい |
| 一次で確かめること | 志望理由、基本的な受け答え、勤務条件の確認など、決まっている | 経験や専門性を、答えに応じて深く掘る必要がある |
| 応募者 | 学生・アルバイト希望者など、日中に時間を取りにくい人が多い | 転職者のうち、すでに経験のある専門職・管理職 |
| 会社の知名度 | 応募者が会社をある程度知っている | 応募者がまだ会社をよく知らず、面接で魅力を伝えたい |
経験のある転職者に向かないと考える理由は 2 つあります。こうした人ほど、面接で会社を見極めようとするので、一方通行の選考は「軽く扱われた」と受け取られやすい。もう 1 つは研究の結果で、31 歳以上の応募者は、設問の多い録画面接に特に否定的に反応していました[2]。中途採用で使うなら、設問を 1〜2 問にして、書類選考の補いくらいに抑えてください。
設問は 3 問まで。準備の時間と撮り直しを付ける
録画面接の設計で、応募者の受け止めがいちばん変わるのは設問の数です。11 か国・33 社の実際の応募者 27,809 人のデータを分析した 2024 年の研究では、設問が多いほど反応は否定的になり、答える前の準備時間を長くとることと、撮り直しを認めることは、好意的な反応と結びついていました[2]。30 歳未満の応募者は、1 問あたりの回答時間の上限が長いほうを好んでいます[2]。
回答時間は、短く絞りすぎないほうがよさそうです。回答時間の上限を 1 分・3 分・5 分で比べた研究では、面接の成績は 3 分のときがいちばん高くなりました[4]。一方で、話し終えたあとも話し続けてしまう答えは評価を下げていて、これは上限が長いときに起きやすいとされています[4]。私たちは、上限は 2〜3 分と長めにとり、案内に「1〜2 分で話し終えてかまいません」と書いておく形をすすめます。
新卒の一次選考やアルバイトの採用なら、たとえば次の 3 問で足ります。3 問目は職種に合わせて場面を書き換えてください。
【録画面接の設問(3 問)と設定の例】
設問 1 この仕事に応募した理由と、入社後(働き始めてから)やってみたいこと
設問 2 これまでに、ほかの人と協力して何かをやり遂げた経験を 1 つ
(あなたがしたこと、うまくいかなかったこと、どう乗り越えたか)
設問 3 (職種の場面)例: 店が混んでいるときに、お客様から急ぎの問い合わせを受けました。
あなたなら、まず何をしますか。それはなぜですか
設定
・設問は、録画を始める前に読める(準備の時間 各 60 秒)
・回答時間の上限 各 3 分(案内には「1〜2 分で話し終えてかまいません」と書く)
・撮り直し 各 2 回まで(何回まで撮れるかを、最初の画面に書く)
・提出の期限 案内を送ってから 7 日(土日を 1 回はさむ)
・スマートフォンでもパソコンでも提出できる
設問を作るときは、本人の適性と能力に関係のないことを聞かない、という決まりも確かめてください。厚生労働省は、家族や住まいの状況、出生地などを採用選考で聞くことは就職差別につながるおそれがあるとし、話の流れでうっかり聞いたことでも同じだとしています[6]。録画面接は設問が文字で残るので、ライブの面接よりも確かめやすいはずです。
評価は、見る前に設問ごとの基準を決めて揃える
録画面接のいちばんの強みは、全員に同じ質問を同じ条件で出せることです。この強みは、評価の基準も揃えてはじめて生きます。全員に同じ質問をし、決めた基準で採点する面接を構造化面接といいます。2022 年に発表された採用手法の再分析では、入社後の仕事ぶりを予測する力の平均は、構造化面接が .42 で、調べた手法の中で最も高くなりました[5]。ただし、その値は面接の作り方によって大きくばらつくことも分かっています[5]。基準を作らずに「なんとなく良さそう」で見る録画面接は、この恩恵を受けられません。
基準は、設問ごとに「何を見るか」と、1 点・3 点・5 点の答えの目安を書いた評価シートにします。上の 3 問なら、たとえば次のとおりです。
| 設問 | 見ること | 1 点 | 3 点 | 5 点 |
|---|---|---|---|---|
| 1. 応募した理由 | 仕事の中身を知ったうえで選んでいるか | どの会社にも言える理由だけ | 仕事の中身に触れている | 仕事の中身と自分の経験や希望がつながっている |
| 2. 協力した経験 | 自分が何をしたかを具体的に話せるか | チームの話で、本人の行動が見えない | 本人の行動が 1 つ分かる | うまくいかなかった点と、その後の行動まで分かる |
| 3. 職種の場面 | 優先順位と理由を考えられるか | 何をするかが分からない | することは言えるが、理由が無い | 何を先にするかと、その理由を言える |
見る側の決まりも、先に文字にしておきます。
- 1 本の動画を 2 人が別々に採点し、点を出してから話し合う(先に話すと、声の大きい人の評価に寄る)
- 応募者ごとにではなく、設問ごとに全員分を続けて見る(比べる目が揃う)
- 背景や部屋、映像と音の質、話し方のなまり、撮った機器は評価しない(採点欄に入れない)
- 点が基準の前後の人は、もう 1 人が見てから決める
録画を AI に分析させるサービスを使う場合は、AI の点数を先に見ないで録画を見るなど、点数に引きずられない工夫も要ります。詳しくはAI面接の導入ガイドの、人が確かめるべきところを見てください。
辞退を増やさないのは、案内の文面と、会社が先に見せる動画
録画面接を「苦手」と答えた学生に理由を聞くと、上位は「何度も撮り直さないといけなくなった」(54.2%)、「相手がいない状況でひとりで話すのが苦手」(53.7%)、「うまくいったかどうかの手ごたえがない」(50.2%)でした[1]。どれも、会社の側の設計と案内で、ある程度は和らげられます。
| 苦手な点(録画面接が苦手な学生のうち) | 会社ができる手当て |
|---|---|
| 何度も撮り直さないといけなくなった(54.2%) | 撮り直しの回数を先に決めて伝える。「言い直しや言葉に詰まるのは減点しない」と書く |
| 相手がいない状況でひとりで話すのが苦手(53.7%) | 設問ごとに、面接官が質問を読み上げる短い動画を付ける |
| うまくいったかどうかの手ごたえがない(50.2%) | 何を見て評価するかと、結果を連絡する日を案内に書く |
| 失敗したのに撮り直しできなかった(24.8%) | 撮り直しを 1 回も認めない設定は避ける |
案内の文面も、応募者の受け止めを変えます。海外の研究では、「全員に同じ質問を同じ条件で出している」と標準化を説明すると、録画面接が公正だという受け止めが上がり、それが会社の魅力の評価にもつながりました。「好きな時間に受けられる」と柔軟さを説明すると、使いやすさの受け止めが上がっています[3]。両方を書いておけば損はありません。
件名: 一次選考(録画面接)のご案内
(お名前)さん
このたびはご応募ありがとうございます。一次選考は、録画面接でお願いしています。
応募してくださった全員に、同じ質問を同じ条件でお答えいただき、
決めた基準で 2 人の担当者が見ています。日中に時間を取りにくい方も、
ご都合のよい時間に受けていただけます。
・質問は 3 問です。録画の前に、各 60 秒、質問を読んで考える時間があります
・1 問 1〜2 分で話し終えてかまいません(上限は 3 分)
・撮り直しは 1 問につき 2 回までできます。言い直しや言葉に詰まるのは減点しません
・見ているのは、質問への答えの中身です。服装・背景・撮る機器は評価しません
・スマートフォンでもパソコンでも提出できます
・提出の期限: (月日・曜日)23:59
・結果のご連絡: (月日・曜日)までに、このメールアドレスへ
・録画は選考のためだけに使い、選考が終わってから(期間)で消去します
当社の仕事や職場の様子は、こちらの動画でご覧いただけます。
録画の前にご覧いただくと、質問 1 にも答えやすくなると思います。
(動画の URL)
案内の最後に動画を置いたのには理由があります。録画面接には、応募者が会社に質問する逆質問の時間がありません。応募者は会社のことをよく知らないまま、自分だけを見せることになります。私たちは、応募者に撮ってもらう前に、会社の側が先に見せるのが筋だと考えています。動画で採用では、残業や仕事の中身のように応募者が知りたいことを選ぶと、働く人がそれに答えている動画に進む採用動画を作れます。どの問いがよく選ばれたかも分かるので、面接で聞かれる前に答えておくべきことも見えてきます。
応募者の側がどんな気持ちで、どう準備して録画に向かっているかは、姉妹サイトの録画面接のコツ(求職者向け)に書きました。案内文を作る前に読むと、何を書いておけば安心してもらえるかが分かります。
録画は個人情報。使い道と消す時期を先に決める
職業安定法は、募集を行う者が応募者の個人情報を集めるときは、業務の目的に必要な範囲で目的を明らかにして集め、その目的の範囲で保管し使うことを求めています(第 5 条の 5)[7]。録画は顔と声が残るので、選考のほかに使わないこと、保存する期間、消し方を決めて案内に書いてください。録画面接のサービスに預ける場合は、サービスの側で録画をどう保存し、何に使うかを契約の前に確かめます。個別の判断は社会保険労務士・弁護士に相談してください。
効果は、面接官の時間と、提出率と、その後の辞退で確かめる
導入して 2〜3 か月たったら、浮いた時間と、失ったものを並べて見ます。見る数字は次の 4 つです。
- 一次選考にかかった面接官の時間(録画を見る時間も含める。始める前と比べる)
- 案内を送った人のうち、期限までに提出した人の割合
- 録画面接を通った人のうち、次の面接に来た人の割合
- 内定を出した人の承諾率と、承諾後の辞退
提出率が低いときは、設問の数、期限の短さ、案内の分かりにくさを疑います。提出率は高いのに次の面接に来ない人が多いときは、録画面接のあいだに志望度が下がっています。そのときは、録画の前に見せる会社の動画を見直すか、二次面接までの間をつめてください。内定のあとの辞退への手当ては、内定辞退を防ぐ方法にまとめています。
面接官の時間がたしかに減り、提出率も次の面接への参加も落ちていなければ、録画面接はその選考に合っています。どちらかが落ちているなら、浮いた時間を、二次面接で応募者の質問に答える時間に回してください。録画面接で減らした会話は、どこかで返す必要があります。


