月曜の朝、媒体の検索で条件に合った 50 人を選び、先週と同じ文面をまとめて送る。名前のところだけ差し込みで変わる。1 週間たって、返信は 1 通。スカウトメールの例文を探し直すのは、たいていこのあとです。

先に私たちの考えを書きます。スカウトメールの返信は、文章のうまさではほとんど決まりません。決めるのは「なぜあなたに送ったのか」を、相手のプロフィールの言葉で 1 文書けるかどうかです。その 1 文が書けない相手には送らず、書ける相手にだけ短く送る。数を減らしたほうが、返信は増えます。

ダイレクトリクルーティングとは、企業が求職者を選んで直接声をかける採用のやり方

ダイレクトリクルーティングとは、求人を出して応募を待つのではなく、企業がデータベースで求職者のプロフィールを見て、会いたい人に直接連絡する採用のやり方のことです。そのときに送るのがスカウトメールで、媒体によって「オファー」「スカウト」「メッセージ」と呼び名が違います。

受け取る側には、すでにかなりの数が届いています。就活スカウトサービスを使ったことのある 2026 年卒の学生 286 人に聞いた調査では、スカウトを「ほぼ毎日」受け取る人が 23.4%、「週 2〜3 回」が 26.9%、「週 1 回」が 20.3% で、週 1 回以上の人が約 7 割でした[1]。自社の 1 通は、その束の中の 1 通として読まれます。

「返信率の平均は何%か」もよく聞かれますが、媒体・職種・新卒か中途かで大きく変わり、条件をそろえた公的な統計はありません。媒体会社の出す平均と比べて一喜一憂するより、自社の文面どうしを比べるほうが役に立ちます(測り方は最後の節に書きました)。

テンプレートのスカウトメールは、開かれても読まれていない

同じ調査で、スカウトを受け取ったときの反応を聞くと、「一応開くが、しっかりは読まない」が 40.2%、「開かずにスルー・削除することが多い」が 25.2% でした[1]。合わせると 6 割を超えます。読まない理由は「数が多くて読む気にならない」55.1%、「志望業界・職種と違う企業からも届く」41.2%、「パッと見てテンプレートっぽいと感じる」40.6% です[1]。

反対に、しっかり読みたくなる内容を聞いた結果が下のグラフです。

プロフィールを読み込んでいると感じる 60.5% 一次試験の免除など特別な選考が分かりやすい 51.1% スカウトした理由が具体的に書かれている 46.9% ポジションや仕事内容が明確にイメージできる 27.3% スカウトサービスを使ったことのある 2026 年卒 286 人(複数回答)
学生が読みたくなるスカウトは「自分を読み込んでいる」と「選んだ理由が具体的」(ABABA 総研 2025[1])
数値を表で見る
どんな内容なら、しっかり読みたいと思うか割合
自分のプロフィール(経験・志望)をしっかり読み込んでくれていると感じる内容60.5%
一次試験の免除など特別な選考を含む内容がわかりやすく提示されている51.1%
なぜスカウトしたのかの理由が具体的に書かれている46.9%
ポジションや仕事内容が明確にイメージできる27.3%

1 位と 3 位は、同じことを別の言い方で聞いています。「この人は私のプロフィールを読んだうえで送ってきた」と分かるかどうかです。海外でも傾向は同じで、LinkedIn が 2021 年 5 月から 1 年間の数千万通のスカウト(InMail)を調べたところ、1 人ずつ送ったものは一斉に送ったものより返信率が約 15% 高くなっていました[2]。

差し込みで名前を変えても、学生はそれを個別だとは受け取りません。名前の次の行から、だれにでも当てはまる文が続くからです。

件名は「だれが・なぜあなたに・何を」を前に置く

件名は、受信箱の一覧で前の 20 文字ほどしか見えない前提で書きます。媒体やスマホの画面で表示される長さが違うので、大事な言葉ほど前に置きます。「【特別選考のご案内】」「あなただけの特別なオファー」は、どの会社も使うので一覧の中で埋もれます。

  • だめな例: 【特別オファー】あなたの経験を活かしませんか/株式会社□□
  • 新卒の例: 塾講師の 3 年間を読んで連絡しました(地域食品メーカー 人事 佐藤)
  • 中途の例: 経理の月次締めを 5 日短くした経験について、30 分お話を聞かせてください
  • 選考が変わるとき: 書類選考なしで、配属予定の課長と 30 分話せます(10 月中)

選考の免除や面談の確約を件名に書くのは、実際にそうする場合だけです。スカウトの電子メールも、職業安定法で募集の情報を出す「広告等」の方法に含まれていて[5]、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示はできません[4]。返信したら普通の選考だった、という件名を送ると、私たちは、その 1 人だけでなく、次に送るスカウトも信じてもらえなくなると考えています。

本文は 5 つの部品で組み、人が書くのは「選んだ理由」の 1 文

本文は長くしないでください。LinkedIn の同じ分析では、400 字(英語の文字数)未満の短い InMail は平均より返信率が 22% 高く、1,200 字を超えるものは 11% 低くなっていました[2]。日本語なら、件名を除いて 300〜500 字、スマホの 1〜2 画面が目安だと私たちは考えています。

その中に入れるのは、名乗り、選んだ理由、任せたい仕事、次の一歩、断り方の 5 つです。このうち 3 つは職種ごとに一度書けば使い回せます。毎回書き直すのは「選んだ理由」の 1 文だけで、そこにプロフィールの言葉を 1 つ引用します。

【新卒の例】
件名: 塾講師の 3 年間を読んで連絡しました(◇◇食品 人事 佐藤)

山田さん
はじめまして。◇◇食品(従業員 120 人)で採用を担当している佐藤です。

[選んだ理由・ここだけ毎回書く]
プロフィールの「生徒一人ひとりに合わせて教材を作り直した」という一文を読み、
お客様ごとに配合を変える当社の商品開発の仕事に近いと思い、ご連絡しました。

[任せたい仕事]
入社後は営業で 1 年、お客様の工場を回ったあと、商品開発に移る人が多いです。

[次の一歩]
選考ではなく、開発の先輩と 30 分オンラインで話す場を用意しています。
10 月 20 日〜31 日の平日で、ご都合のよい日をこのメッセージに返してください。

[断り方]
興味がなければ、返信なしで大丈夫です。

会う前に、開発の 1 日を 2 分の動画で見られます: (リンク)
【中途の例】
件名: 月次締めを 5 日短くしたご経験について、30 分お話を聞かせてください

鈴木さん
はじめまして。株式会社△△(物流・従業員 300 人)人事の高橋です。

[選んだ理由]
職務経歴にあった「月次決算を 10 営業日から 5 営業日に短くした」取り組みを読みました。
当社は来年、会計の仕組みを入れ替える予定で、その進め方を一緒に考えてくれる人を探しています。

[任せたい仕事]
経理課(5 人)で月次・年次の決算と、仕組みの入れ替えの計画づくり。
年収は 520〜650 万円を想定しています。

[次の一歩]
まずは経理課長と 30 分、仕事の中身だけの面談はいかがでしょうか。
平日 18 時以降も調整できます。

[断り方]
転職をお考えでない時期でしたら、返信は不要です。

「断り方」の 1 行は、入れると返信が減りそうに見えますが、私たちは入れるほうを勧めます。返さなくてよいと分かると、相手は迷わずに読むか閉じるかを決められます。返信するかどうかで悩ませるスカウトは、次から開かれなくなります。

「次の一歩」は、応募ではなく小さく置きます。最初の返信から書類提出を求めると、学生にとっては応募と変わりません。面談の進め方はカジュアル面談の 30 分の台本に書きました。

動画のリンクは「会う前に見てほしい 2 分」として 1 本だけ添える

スカウトの本文は短くするので、職場の様子や一緒に働く人の話は入りきりません。そこを動画のリンクで補います。添えるのは 1 本だけ、それも会社紹介の長い動画ではなく、選んだ理由とつながる場面がよいです。上の新卒の例なら、開発の先輩の 1 日です。

受け取った学生の 58.7% は企業のホームページや採用ページを見に行っていました[1]。返信の前に、会社のことを確かめたいのです。リンク先で知りたいことにすぐ届けば、返信する理由が 1 つ増えます。

動画で採用では、公開したシナリオを「リンク・QRコードで配る」から共有リンクにでき、「どこに載せるリンクですか」に「スカウトメール」と入れておくと、解析でスカウトから開かれた数を、採用ページや SNS と分けて見られます。見る人が「残業は?」「未経験でも大丈夫?」のような選択肢で知りたい場面に進めるので、2 分の中で相手の問いに答えられます。

受け取る側が動画のどこを見ているかは、姉妹サイトの本気のスカウトかどうかを見分けて返信する方法に書いています。学生は、スカウトの文面と動画の中身が合っているかも見ています。

AI で下書きするときは、名前と経歴を入れず、選んだ理由は人が書く

AI は、職種ごとに使い回す 3 つの部品(名乗り・任せたい仕事・次の一歩)の下書きには向いています。向かないのは、選んだ理由の 1 文です。プロフィールを読んで何に惹かれたかは、読んだ人にしか書けません。

個人情報の扱いにも注意が要ります。個人情報保護委員会は、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを生成 AI に入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われると、個人情報保護法に違反する可能性があるとして、機械学習に使われないことなどを確かめるよう求めています[3]。候補者の氏名や職務経歴をそのまま貼るのはやめて、社内で使ってよいと決めたサービスで、名前を外して使ってください。

あなたは中小企業の採用担当です。次の条件で、スカウトメールの
「任せたい仕事」と「次の一歩」の部分だけを、合わせて 200 字以内で書いてください。

・職種: (例: 商品開発。入社後 1 年は営業で顧客の工場を回る)
・次の一歩: 選考ではない 30 分のオンライン面談。日程は相手が選ぶ
・書かないこと: 「特別」「あなただけ」など、実際の運用と違う言葉
・候補者の名前や経歴は入力しません。選んだ理由は人が書きます

書いたあと、事実か確かめるべき箇所(数字・制度・選考の流れ)を箇条書きで挙げてください。

AI の下書きを送る前に、人が確かめることは 3 つです。数字と制度が求人票・就業規則と合っているか。選考の約束が実際の運用と同じか。そして、選んだ理由に年齢・出身地・家族など、仕事の適性や能力と関係のないことを書いていないか[6]。「地元が同じで」は親しみのつもりでも、出身地を理由に選んだと受け取られます。AI で求人票を書くときの確認は求人票を AI で作るときに人が確かめる 7 項目にまとめています。

返信率は、返信・面談・応募の 3 つの数で文面ごとに比べる

返信率だけを追うと、件名を派手にして返信は増えたのに、面談に来ない、という形になりがちです。文面ごとに、送った数・返信・面談・応募の 4 つを並べて見てください。1 か月に送る数が少ない会社なら、割合より人数で、2〜3 か月分を並べます。

返事を待つ期間の目安もあります。LinkedIn の分析では、返信の 65% は送ってから 24 時間以内、90% は 1 週間以内に来ていました[2]。1 週間返事が無ければ、もう一度送るのは 1 回だけにして、前のメールに書かなかった情報(面談の相手の名前、動画のリンクなど)を 1 つ足します。曜日による差は小さく、返信が少なかったのは金曜と土曜でした[2]。

返信が来たら、その人がどの 1 文に反応したかを面談で聞いてみてください。「理由のところで、ちゃんと読んでくれたと思った」と言われたら、その書き方が自社の型になります。