ChatGPT に「営業職の求人票を作って」と頼むと、30 秒ほどで、求人票の書き方の型どおりに見出しのそろった文章が返ってきます。読み進めると、会社に無いはずの「資格取得支援制度」や「年間休日 120 日以上」が、もっともらしく入っていることがあります。

求人票づくりで AI に任せてよいのは、文章です。条件は任せない。給与・休日・時間外のような条件は就業規則と給与規程から人が表に写し、AI には読みやすくすることと、抜けや危ない表現の指摘をさせる。私たちはこの分け方をおすすめしています。

求人票づくりは、採用で生成 AI がいちばん使われている作業

学情が 2026 年 3〜4 月に企業の人事担当者 295 人に聞いた調査では、中途採用の業務で生成 AI を「すでに利用している」会社は 28.7% でした[1]。「利用を検討している」「利用したいがまだ着手していない」を合わせると、半数を超えます。

使っている・使いたい場面の 1 位は「求人票の作成・ブラッシュアップ」で 65.3%。スカウトメール(56.0%)や選考の案内メール(42.0%)より上です[1]。白紙から文章を起こす手間がいちばん重く、AI の得意なところと重なるからだと思います。

一方で、求人票はただの宣伝文ではありません。書く項目と書き方が法律で決まっていて、間違えれば、応募した人とのトラブルとして返ってきます。

「求人票と違う」の申出は、半分近くが求人票そのものの誤り

ハローワークには毎年、「求人票に書いてあった条件と実際が違う」という申出が寄せられます。2024 年度は 3,297 件で、内容でいちばん多いのは賃金(929 件、20.2%)、次が就業時間(14.4%)、職種・仕事の内容(12.9%)でした[2]。

目を向けてほしいのは、なぜ食い違ったかの内訳です。

求人票が実際と違う 1,478 件 求人者の説明不足 932 件 要因を特定できない 373 件 求職者の誤解 364 件 ハローワークの説明不足 59 件 2024 年度の申出 3,297 件の要因(主なもの)。1 件で複数の要因はそれぞれ計上
食い違いの要因でいちばん多いのは、求人票の内容そのものが実際と違っていたこと(厚生労働省、2024 年度[2])
数値を表で見る
要因(主なもの)件数
求人票の内容が実際と異なる1,478 件
求人者の説明不足932 件
言い分が異なる等により要因を特定できないもの373 件
求職者の誤解364 件
ハローワークの説明不足59 件

1 件の申出で複数の内容を含むものは、それぞれに数えています。

申出 3,297 件に対して、「求人票の内容が実際と異なる」が 1,478 件。求職者の誤解(364 件)の 4 倍あります[2]。食い違いの多くは、読む側ではなく書く側で起きています。

AI はここを良くも悪くもします。項目の抜けを見つけるのは得意です。ただ、条件を AI に考えさせると、ありそうな数字や制度で穴を埋めてしまう。AI が足した 1 行が、そのまま「求人票と違う」の 1 件になります。

求人票に書く労働条件は、法律で決まっている

職業安定法は、労働者を募集する会社に、業務の内容・賃金・労働時間その他の労働条件を示すよう定めています(第 5 条の 3)[3]。あわせて、求人の情報で虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確で最新の内容に保たなければなりません(第 5 条の 4)[3]。ハローワークでも求人媒体でも、自社の採用ページでも同じです[4]。

最低限書く項目は、厚生労働省のリーフレットに記載例つきで並んでいます[4]。AI の下書きで特に崩れやすいところを、右の列に足しました。

求人票に書く項目と、AI の下書きで崩れやすいところ
項目書く中身AI で崩れやすい点
業務内容雇入れ直後の業務と、変更の範囲「変更の範囲」が抜ける。仕事を実際より広く、華やかに書く
契約期間期間の定めの有無。有期なら更新の有無・基準・上限契約社員の募集で「正社員登用あり」だけを書き、更新の基準が消える
試用期間有無と期間。期間中に条件が違えばその内容「試用期間あり」だけで、期間中の給与の違いが落ちる
就業場所雇入れ直後の場所と、変更の範囲本社の住所だけを書く。転勤の可能性を省く
就業時間・休憩始業・終業の時刻と休憩時間「フレックス」「シフト制」と書いて、実際の時間帯が無い
休日曜日・祝日・年末年始など「週休 2 日」と「完全週休 2 日」を取り違える。年間休日を丸める
時間外労働有無。ありなら「月平均 20 時間」のように「残業少なめ」のような数字の無い言い方にする
賃金月給など。固定残業代があれば 3 点を分けて固定残業代を含んだ総額だけを書く。手当を足す
加入保険雇用・労災・厚生年金・健康保険決まり文句として 4 つ全部を書いてしまう
受動喫煙防止措置「屋内禁煙」など項目ごと抜ける
募集者の名称会社の正式な名称ブランド名やサービス名で書く

変更の範囲とは、入社直後だけでなく、将来の配置転換などの見込みも含めた、業務と就業場所が変わりうる範囲のことです。2024 年 4 月から、契約期間の更新上限とあわせて募集の時点で示す項目に加わりました[4]。AI の知識はこうした改正に追いついていないことがあるので、項目の一覧は AI に聞かず、リーフレットのほうを正にしてください。

固定残業代は、3 つを分けて書く

固定残業代とは、一定時間分の時間外労働などに対して、実際の残業の有無にかかわらず定額で払う割増賃金のことです。使う場合は、①固定残業代を除いた基本給の額、②固定残業代の時間数と金額、③その時間を超えた分は追加で払うこと、の 3 つをすべて書くよう求められています[5]。

基本給 190,000 円(固定残業手当を除く額)
固定残業手当 60,000 円(時間外労働の有無にかかわらず、40 時間分の時間外手当として支給)
40 時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給

AI は「月給 25 万円(固定残業代含む)」のように 1 行にまとめたがります。読みやすくはなりますが、これでは基本給も時間数も分かりません。応募する人がこの欄をどう読むかは、姉妹サイトの求人票の見方(固定残業代・年間休日・試用期間の読み方)に書きました。書く側として、一度読んでおくと AI の下書きのどこが足りないかが分かります。

AI に渡すのは条件の表、頼むのは文章

先に、条件だけを 1 枚の表にします。写す元は、就業規則・給与規程・雇用契約書のひな形です。記憶や前回の求人票から写さないでください。前回の求人票が間違っていれば、間違いごと引き継がれます。

【条件の表】就業規則・給与規程・雇用契約書のひな形から写す。空欄は空欄のまま
募集者の名称: 
雇用形態: 正社員(期間の定めなし)/ 契約社員(期間・更新の有無と基準・上限)
試用期間: なし / あり(期間:   期間中の条件の違い:   )
業務内容: (雇入れ直後)        (変更の範囲)
就業場所: (雇入れ直後)        (変更の範囲)
就業時間・休憩: 
時間外労働: なし / あり(前年度の月平均   時間)
休日: (曜日・祝日・夏季・年末年始)  年間休日   日
賃金: 基本給   円 / 手当(名称と額)/ 固定残業代(  時間分   円)
賞与・昇給: (制度と前年度の実績)
加入保険: 
受動喫煙防止措置: 
この求人を載せる日:

この表と、現場の人から聞いた仕事のメモを一緒に渡して、文章にしてもらいます。ChatGPT・Claude・Gemini のどれでも使えます。

あなたは中小企業の採用担当を手伝う編集者です。
下の「条件の表」と「仕事のメモ」から、求人票の文章を作ってください。

# 守ること
- 条件の表の数字・制度・名称は、一字も変えずにそのまま使う。
  表に無い手当・制度・福利厚生・数字は書かない。
- 表の欄が空なら本文に入れず、最後の「要確認」に挙げる。
- 職種名は男女どちらかを表す言葉にしない(例: 営業マン → 営業職)。
- 年齢・性別で応募者を絞る表現、写真の指定はしない。
- 「業界トップ」「必ず」「誰でも」など、表やメモで裏づけられない言い切りは使わない。
- 固定残業代がある場合は、基本給(固定残業代を除く額)/固定残業代の時間数と金額/
  超えた分は追加で支払うこと、の 3 つを別々の行に書く。

# 形
1. 仕事内容(入社直後の仕事、1 日の流れ、変更の範囲)
2. 応募の条件(必須と歓迎を分ける)
3. 働く条件(条件の表の順に、表の言葉のまま)
4. この仕事の大変なところと、その理由(メモにあれば)
5. 選考の流れ
最後に「要確認」を箇条書きで。

# 条件の表
(上の表を貼る)

# 仕事のメモ
(現場の人から聞いたことを箇条書きで貼る)

AI が力を発揮するのは「1. 仕事内容」です。メモの箇条書きを、入社した人の 1 日が浮かぶ文章にしてくれます。逆に「3. 働く条件」は、表を並べ替えるだけの仕事にしておく。ここで AI に工夫させないことが、このプロンプトのいちばんの狙いです。

応募者の名前や経歴のような個人情報は、求人票づくりには要りません。社内でどの AI サービスを使ってよいか、入力した内容が学習に使われない設定かは、AI エージェントで採用業務を減らす記事で確かめ方をまとめています。

書き上がったら、AI に応募者と審査役として読ませる

下書きができたら、別の会話を開いて、今度は読む側として点検させます。書いた会話のまま頼むと、自分の文章を守る方向に引っぱられやすいからです。

あなたは 2 人の役を順に務めます。直さずに、指摘だけを一覧にしてください。

1 人目: この求人に応募を考えている人。
  読んで「これだけでは分からない」「面接で聞きたい」と思うことを 5 つ挙げる。

2 人目: 求人票を審査する担当者。次に当たる箇所を、原文のまま抜き出す。
  - 書かれていない項目(業務内容と変更の範囲、契約期間、試用期間、
    就業場所と変更の範囲、就業時間、休憩、休日、時間外労働、賃金、
    加入保険、受動喫煙防止措置、募集者の名称)
  - 固定残業代があるのに、基本給・時間数と金額・超えた分の支払いのどれかが無い
  - 男女どちらかを表す職種名や、一方を優遇する表現
  - 年齢を限る、または年齢で絞っていると読める表現
  - 根拠の分からない言い切り・誇張
  - 「条件の表」と食い違う数字や言葉

# 求人票
(下書きを貼る)

# 条件の表
(同じ表を貼る)

1 人目の答えは、求人票を直す材料になるだけでなく、面接でよく聞かれる問いの予告にもなります。「残業の月平均は分かったが、忙しい時期はいつか」のような問いが出たら、求人票に 1 行足すか、面接で先に話すことにします。

2 人目の指摘は、ありがたい一方で、AI の点検も漏れることがあります。指摘が 0 件でも「問題なし」とは受け取らず、次の 7 項目は人が見てください。

出す前に人が確かめる 7 項目

どれも、条件の表か元の規程と突き合わせれば数分で終わるものです。

  1. 賃金の数字: 基本給・手当の名称と額が、給与規程と同じか。AI が「〜手当」を足していないか。
  2. 固定残業代の 3 点と計算: 3 つが別々に書かれているか。あわせて、下の計算で額が足りているかを見る。
  3. 休日: 「完全週休 2 日」か「週休 2 日」か。年間休日の日数が会社のカレンダーと合っているか。
  4. 変更の範囲: 業務と就業場所の両方に、雇入れ直後と変更の範囲が書かれているか。
  5. 試用期間: 期間と、期間中に給与などが違うならその内容。
  6. 性別・年齢の表現: 職種名・歓迎の書き方・写真やイラストまで含めて見る。
  7. AI が足したもの: 表とメモに無い制度・数字・「No.1」などの言葉。最後に、掲載する日を入れる。

固定残業代は、時給に直して確かめる

2 つ目の計算は、AI に任せず電卓でやってください。例として、月給 25 万円(固定残業代 40 時間分 6 万円を含む)、1 日 8 時間、年間休日 120 日の求人で計算します。

1 か月の平均所定労働時間
 = (365 − 120)日 × 8 時間 ÷ 12 ≒ 163.3 時間
基本給を時給に直す
 = 190,000 円 ÷ 163.3 時間 ≒ 1,163 円
固定残業代の下限
 = 1,163 円 × 1.25 × 40 時間 ≒ 58,170 円
 → 60,000 円は足りている

固定残業代は足りています。ところが、基本給を時給に直した 1,163 円は、2026 年度の地域別最低賃金の全国加重平均 1,177 円を下回ります[8]。最低賃金と比べる額には、固定残業代を含む時間外の割増賃金や、通勤手当・家族手当・精皆勤手当は入れず、月給制なら 1 か月平均の所定労働時間で割って比べるからです[6][7]。最低賃金は都道府県ごとに違い、2026 年度は 1,085 円から 1,280 円まで開きがあります[8]。

「月給 25 万円」だけを見ていると、まず気づきません。時間外の割増は通常の 1.25 倍以上(労働基準法 第 37 条と、それに基づく政令)[11]なので、基本給の時給が上がれば固定残業代の下限も上がります。最低賃金が改定される 10 月前後は、出している求人の基本給を一度計算し直してください。

性別と年齢は、言葉の選び方で違反になる

募集で性別を理由に差別することは男女雇用機会均等法で禁じられていて、厚生労働省の資料は、「ウエイター」「〜レディ」のような一方の性を表す職種名、「男性歓迎」「女性向きの職種」といった表現を違法の例に挙げています[10]。一方の性に偏った職場を強調する写真やイラストも含まれます[10]。年齢も、例外に当たる場合を除いて、募集で制限を設けることが禁じられています[9]。

判断に迷う表現は専門家に

例外に当たるか(年齢制限の例外事由など)、自社の固定残業代の設計が適法かは、ここに書いた一般的な確かめ方では決められません。社会保険労務士・弁護士、または都道府県労働局に相談してください。

求人票に書ききれないことは、働く人の言葉で補う

求人票は、条件を正確に並べるための書類です。「時間外労働 あり(月平均 20 時間)」は書けても、忙しい 3 月の夜に職場がどんな様子か、だれが手伝ってくれるかまでは書けません。申出の要因で 2 番目に多かった「求人者の説明不足」(932 件)[2]は、こうした書ききれない部分で起きていると私たちは見ています。

点検プロンプトの 1 人目が挙げた「面接で聞きたいこと」は、そのまま説明の材料になります。数字は求人票に、その数字の中身は働く人の言葉で。大変なことを理由と見返りと一緒に伝える方法は、採用のミスマッチを防ぐ RJP の記事に台本の型を載せました。

動画で採用では、「残業は実際どう?」のような問いごとに、働く人が答える短いシーンを並べた採用動画を作り、求人ページに埋め込めます。求人票の数字を、その数字を毎日経験している人が説明する。文字と動画で役割を分けると、AI で速く作った求人票も、応募する人にとって確かめやすいものになります。