求人サイトに出して 2 か月。応募は 4 件、面接まで来たのは 1 人で、その人も「ほかで決まりました」と辞退した。給与を上げようにも、大手の賃上げの幅にはとても追いつけない。中小企業の中途採用の担当者から、よく聞く話です。

難しいのは、たしかです。ただ、数字を見ると、つまずいている場所は「応募が来ない」だけではありません。私たちは、中小企業の中途採用は、給与や知名度で大手と比べられる場所で戦うほど負けると考えています。転職する人が前の会社を辞めた理由に先に答え、社員からの紹介と自社の発信で「比べられる前に知ってもらう」経路を増やすほうが、採用は決まります。

有効求人倍率は 1.18 倍。それでも中小企業の 6 割は、中途で必要な人数を採れていない

2026 年 8 月の有効求人倍率(季節調整値)は 1.18 倍、正社員に限ると 1.00 倍でした[1]。数字だけ見ると、求職者 1 人に求人がおよそ 1 件。ひどい人手不足には見えません。

ところが、会社に「必要な人数を採れたか」を聞くと、様子が変わります。リクルートワークス研究所が 2025 年 10〜11 月に 4,071 社に聞いた調査では、2025 年度上半期に中途採用で必要な人数を「確保できなかった」企業は 56.6% でした[2]。規模が小さいほど、その割合は高くなります。

5〜299 人 59.6% 300〜999 人 55.1% 1,000〜4,999 人 53.8% 5,000 人以上 46.5% 2025 年度上半期に中途採用をした企業(従業員規模別)
中途採用で必要な人数を確保できなかった企業は、規模が小さいほど多い(リクルートワークス研究所「中途採用実態調査」2026 年 2 月[2])
数値を表で見る
従業員規模確保できた確保できなかった
5〜299 人39.5%59.6%
300〜999 人42.2%55.1%
1,000〜4,999 人43.4%53.8%
5,000 人以上47.7%46.5%

5,000 人以上の会社では「確保できた」が上回っているのに、5〜299 人の会社では 10 社のうち 6 社が採れていません。業種では建設業(62.6%)や運輸業(62.1%)で、採れなかった会社が 6 割を超えています[2]。人が足りないのは市場全体の話ですが、その不足は小さな会社に寄って出ています。

中小企業の中途採用は「応募が来ない」より「決まらない」でつまずく

意外に思われるかもしれませんが、中小企業の中途採用では、応募そのものは予定より多く集まっている会社が多数派です。日本政策金融公庫が 2026 年 3 月に中小企業 4,123 社に聞いた調査では、正社員の中途採用で応募者数が採用予定者数を上回った(100% 超)会社は 63.0% でした[3]。

それなのに、採用できた人数が予定に届かなかった会社は 32.4%(50% 未満 12.8%、50% 以上 100% 未満 19.6%)あります[3]。応募から採用までのどこかで、人が抜けているということです。同じ調査には「応募はあるものの、実際の労働環境や作業内容がわかると辞退するなどミスマッチが多い」という声も載っています[3]。

だから、打ち手を考える前に、直近 1 年の中途採用を次の 4 つで数えてください。どこで人が減っているかで、直すところが変わります。

中途採用のどこで人が減っているかを数える
段階減っているときに疑うこと直すところ
求人を見た → 応募見られていない。または、見ても応募するほどの理由が無い出す場所、求人票の前に出す項目
応募 → 面接連絡が遅い。面接の日程が平日昼だけ返事の速さ、面接の時間帯・オンライン
面接 → 内定面接で初めて知った条件や仕事の中身で、気持ちが離れる面接の前に見せる情報の量
内定 → 入社他社と条件だけで比べられている比べられない項目の伝え方、内定後の連絡

面接や内定のあとで抜けているなら、求人広告を増やしても同じことが起きます。入社前に大変なことも含めて見せるやり方は、採用のミスマッチを防ぐ RJP の記事に書きました。

転職する人が前の会社を辞めた理由に、求人票で先に答える

中途で応募してくる人は、たいてい前の会社で何かが合わなかった人です。厚生労働省の 2024 年の雇用動向調査で、転職した人が前の会社を辞めた理由を見ると、定年や契約満了、その他の個人的理由を除いた上位は次のとおりでした[4]。

  • 男性: 給料等収入が少なかった 10.1%、職場の人間関係が好ましくなかった 9.0%、労働時間・休日等の労働条件が悪かった 8.6%、会社の将来が不安だった 7.4%
  • 女性: 労働時間・休日等の労働条件が悪かった 12.8%、職場の人間関係が好ましくなかった 11.7%、給料等収入が少なかった 8.3%

給料、働く時間、人。求職者は求人票を、この 3 つに答えが書いてあるかで読んでいます。ところが中小企業の求人票は「アットホームな職場」「やる気次第で昇給」のように、3 つとも言葉だけで済ませていることが多い。大手より額が低くても、上がり方と働く時間が具体的に書いてある求人票は、比べたときに負けにくくなります。

  • 給料: 初年度の額だけでなく、入社 3 年目の社員の実際の月給の幅、昇給の時期と決め方
  • 働く時間: 前年度の月平均の残業時間、繁忙期の時期と、そのときの帰る時間
  • 人: 配属先の人数と年齢層、最初に仕事を教える人、この 1 年で辞めた人がいるか

もう 1 つ、中小企業が書けるのに書いていない項目があります。2024 年 4 月から、募集の際に「就業場所の変更の範囲」「従事すべき業務の変更の範囲」を明示することが必要になりました[5]。転勤の無い会社なら、変更の範囲を「なし」と書けます。全国に転勤のある大手から移りたい人には、それだけで応募の理由になります。求人票の欄ごとの書き方と、AI で下書きするときの確かめ方は求人票の書き方の記事にまとめています。求職者の側が求人票のどの欄を見ているかは、姉妹サイトの求職者向けの求人票の見方が参考になります。

大手と同じ土俵に乗らない。比べられる項目と、比べられない項目

年収、休日の日数、会社の知名度。求人サイトの検索の絞り込みに出てくる項目は、大手と横に並べて比べられます。ここで勝とうとすると、中小企業は賃上げの体力勝負になります。公庫の調査でも、人材募集で工夫したことの 1 位は「初任給の引き上げ」43.4% でした[3]。上げられるなら上げたほうがよいのですが、それだけでは差が縮まりません。

中途採用で、大手と比べられる項目と比べられない項目
項目大手と比べられやすいか中小企業が出せるもの
年収・賞与比べられる(数字で並ぶ)上がり方の具体例、評価を決める人が誰か
休日・残業比べられる繁忙期と閑散期の差、休みの取り方の実際
任される範囲比べにくい入社 1 年目に任せる仕事、社長や顧客との距離
勤務地・転勤比べにくい変更の範囲「なし」、通勤時間
一緒に働く人比べられない配属先の人の顔と話し方、教える人の名前

下の 3 行は、求人票や面接では伝えにくいものです。だから、伝える経路を変えます。次の節の社員紹介と、最後の節の動画は、どちらも「比べられない項目」を応募の前に届けるやり方です。

社員からの紹介は、人材紹介と同じくらい効いている

公庫の調査で、中小企業が「効果が大きかった」募集経路を 5 つまで挙げた結果を見ると、社員からの紹介は人材紹介エージェントとほぼ同じ割合でした[3]。

求人サイト 55.3% ハローワーク 54.2% 人材紹介エージェント 28.5% 社員からの紹介 28.1% 自社の HP・SNS 21.4% 効果が大きかった順に 5 つまで回答(n=2,722)
社員からの紹介は、費用のかかる人材紹介とほぼ同じ割合で「効果が大きかった」と答えられている(日本政策金融公庫 総合研究所 2026 年 6 月[3])
数値を表で見る
募集経路割合
求人サイト55.3%
ハローワーク54.2%
人材紹介エージェント28.5%
自社従業員からの紹介28.1%
自社のホームページや SNS21.4%

社員紹介(リファラル採用)とは、社員に知人や前の職場の同僚を紹介してもらう採り方のことです。紹介された人は、応募の前に、知り合いの口から職場の人や働く時間の実際を聞いています。さっきの表の「比べられない項目」が、最初から届いている状態です。

ただ、「誰かいい人いたら紹介して」と朝礼で言うだけでは、ほとんど紹介は出てきません。社員が知人に送れる文面を、会社が用意してください。

【社員が知人に送る文面の例】

今うちの会社で、〈職種〉を 1 人探しています。
もし興味がありそうな人がいたら教えてください。

・仕事: 〈入社して最初の 1 年でやること〉
・働く時間: 〈前年度の月平均の残業、繁忙期〉
・給料: 〈月給の幅と、上がり方〉
・一緒に働く人: 〈配属先の人数と雰囲気〉
・場所: 〈勤務地。転勤の有無〉

いきなり応募でなくて大丈夫です。
まずは 30 分、話を聞くだけでもできます。
(採用担当: 〈名前と連絡先〉)

最後の 2 行が大事なところです。知人に「応募して」とは頼みにくくても、「話を聞くだけ」なら声をかけやすい。紹介で来た人との最初の 30 分の進め方は、企業側のカジュアル面談の記事にあります。

紹介のお礼を払うときは

職業安定法 40 条は、募集に関わる社員に、賃金・給料などとして払う場合などを除いて報酬を与えることを禁じています[6]。紹介した社員にお礼を出すなら、就業規則や賃金規程に定め、給与の手当として払う形にするのが一般的です。制度にする前に、社会保険労務士に確かめてください。

なぜ動画が中小企業の中途採用に向くのか

知人のいない人に「比べられない項目」を届けるには、文字より動画が向いています。配属先の先輩がどんな顔で、どんな言葉で仕事の話をするか。朝何時に来て、何時に帰るか。求人票に何行書いても伝わりにくいことが、1〜2 分の動画なら伝わります。大手のような制作費は要りません。スマホで、配属先の人に 3 つの問いに答えてもらうだけで始められます。

  1. 「入社して最初の 1 年は何をしましたか?」

    任される範囲と、教えてくれる人がいるかが分かる。

  2. 「いちばん忙しい時期は、何時に帰っていますか?」

    求人票の残業時間の数字が、本当の話として伝わる。

  3. 「前の会社と比べて、変わったことは?」

    中途で入った人に聞く。応募する人の「辞めた理由」に、いちばん近い答えになる。

動画で採用では、撮った答えを「シーン」としてつなぎ、見る人が「残業は?」「未経験でも大丈夫?」と知りたいことを選んで進む動画にできます。採用ページや求人に埋め込めるほか、求職者向けの「動画で就職」にも載り、問いから探している人の目に留まります。どの動画をどこに置き、応募が増えたかをどう測るかは、採用動画の効果の記事に書きました。