「うちも TikTok で採用をやったらどうか」。社長の一言で SNS採用の担当になったものの、何から手を付ければいいのか分からない。中小企業では珍しくない場面です。

先に私たちの考えを書いておきます。TikTok や Instagram のリール、YouTube ショートは、応募を取る場所ではありません。会社の名前を知ってもらう入口です。入口のあとに、もっと詳しく確かめられる場所を用意しておかないと、再生数が伸びても応募は増えません。

学生の 7 割が就活で SNS を使うのに、企業の公式 SNS を必ず見るのは 1 割

マイナビが 2026 年卒の大学生に聞いた調査では、就活の準備で SNS を使ったことがある学生は 68.2% でした[1]。使っている SNS は LINE の公式アカウント(45.6%)、X(36.4%)、Instagram(32.7%)、YouTube(26.0%)、TikTok(12.9%)の順です[1]。

ところが、企業のことを調べるときに必ず見る情報源を聞くと、景色が変わります。

就職情報サイト 80.3% 企業の公式 SNS 9.6% それ以外の SNS 2.6% 2026 年卒の大学生 n=1,885(複数回答)
企業のことを調べるとき、学生が必ず見るのは就職情報サイト。公式 SNS は 1 割に届かない(マイナビ「2026年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査」[2])
数値を表で見る
情報源必ずチェックする活用する
就職情報サイト80.3%86.2%
企業の公式 SNS アカウント9.6%14.9%
それ以外の SNS アカウント2.6%5.1%

学生は SNS をよく見ています。それでも、会社を比べて決める段になると、まとまった情報のある場所に戻ってくる。同じ調査では、企業の情報を探すときに「情報が多すぎて整理できない」と答えた学生が 72.4% いました[1]。流れていく短い動画だけで、会社を選んでもらうのは難しいということです。

企業の側は SNS を使い始めています。企業を知ってもらうために SNS を使った企業は、2021 年卒の採用で 14.3%、2025 年卒では 26.3% でした[2]。使う会社が増えるほど、ただ投稿するだけでは埋もれます。

SNS採用とは、ショート動画で知ってもらい、確かめられる場所へ連れて行くこと

SNS採用とは、TikTok・Instagram・YouTube・X などの SNS で会社や働く人のことを発信し、採用につなげる活動のことです。ソーシャルリクルーティングとも呼ばれます。

始める前に決めてほしいのは、投稿の中身より先に、動画を見た人をどこへ連れて行くかです。私たちは次の順を勧めています。

ショート動画、プロフィール、採用ページの動画、説明会・応募の 4 段の流れと、各段で見る数字(再生数と最後まで見た割合、リンクのタップ数、採用ページの動画の再生と選ばれた問い、申し込み数とどの SNS から来たか)
再生数だけを見ていると、どこで人が離れているかが分からない。段ごとに見る数字を決めておく

行き先は、採用ページに置いた少し長めの動画や、説明会の申し込みです。採用ページに動画をどう置けば応募につながるかは、採用ページの動画と応募数の関係にまとめました。

測る数字も段ごとに分けます。再生数とフォロワー数は入口の数字で、伸びても採用が進んだとは限りません。毎月見るのは、プロフィールのリンクが押された回数と、その先で動画が見られた回数、応募と説明会の申し込みです。リンクの URL に媒体ごとの印(?from=tiktok など)を付けておくと、どの SNS から来た人かが採用ページの側で分かります。

動画で採用では、採用ページに埋め込んだ動画で、見る人が「残業は?」「1 年目の仕事は?」と知りたいことを選んで進めます。どの問いが選ばれ、どこで見るのをやめたかが分かるので、SNS から来た人が何を知りたがっていたかを、次の投稿の企画に戻せます。

TikTok・Instagram リール・YouTube ショートは、届く年代と残り方で選ぶ

最初は 1 つに絞ってください。3 つを同時に始めると、どれも続きません。選ぶときに見るのは、採りたい人の年代と、投稿があとから見つけてもらえるかです。

YouTube 96.3% 91.6% Instagram 82.6% 67.1% X 73.4% 57.0% TikTok 61.5% 42.6% 20 代 40 代
20 代は Instagram が 8 割を超え、40 代でも TikTok を 4 割が使っている(総務省「令和7年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」[3])
数値を表で見る
サービス10 代20 代30 代40 代
YouTube95.0%96.3%94.0%91.6%
Instagram69.3%82.6%76.6%67.1%
X(旧 Twitter)56.4%73.4%67.7%57.0%
TikTok67.9%61.5%44.7%42.6%

総務省の調査(2025 年 12 月、13〜79 歳の 1,800 人)では、TikTok はどの年代でも前の年より利用が増えていました[3]。若い人の SNS という印象がありますが、30 代で 44.7%、40 代で 42.6% が使っています。中途採用でも、候補から外す理由にはなりません。

3 つのショート動画の違い(2026 年 10 月時点)
TikTokInstagram リールYouTube ショート
よく届く相手10〜20 代。10 代の 3 人に 2 人(67.9%)が使う[3]20〜30 代。女性の利用が多い[3]年代を問わない(10〜40 代で 9 割超)[3]
残り方流れていきやすいプロフィールに並び、会社の名前で見に来た人が見返す検索とチャンネルに残る。長い動画と並べられる
向いている使い方名前を知ってもらう職場と人の雰囲気を積み上げる説明会や社員インタビューの長い動画への入口
始めるときの注意企業の投稿は商用音楽ライブラリの曲だけ[4]トライアルリールで、フォロワー以外に先に試せる[6]ショートは 3 分まで、正方形か縦長[5]

迷ったら、新卒中心なら Instagram、中途も採るなら YouTube から始めるのが手堅いと私たちは考えています。どちらも投稿があとまで残り、会社の名前で調べた人の目に入るからです。TikTok は届く範囲が広いぶん、投稿が流れていくのも早い。名前を知ってもらうことに割り切れるなら向いています。

投稿するのは学生が聞きたいことで、ダンスではない

学生がマイナスの印象を持つ企業の SNS として、自由回答で多く挙がったのは「ダンス動画」「新入社員が踊る動画」でした[2]。会社を知りたくて見ているのに、仕事とも会社の魅力とも関係が無い、と受け取られています。発信してほしい中身として多かったのは、社内の雰囲気や社員の様子、選考のスケジュールや流れ、福利厚生です[2]。

流行りの音や型に乗ると、再生数は伸びることがあります。ただ、見た人が「この会社で働く自分」を思い浮かべられなければ、次の行動にはつながりません。企画は、求職者が聞きたい問いから作ります。最初の 12 本の例を置いておきます。社名と中身を入れ替えて使ってください。

最初の 12 本の企画(週 1 本で 3 か月分)
答える問い撮るもの長さ
どんな会社?社長か現場の責任者が、何をしている会社かを 1 文で30 秒
1 年目は何をする?入社 1〜2 年目の人の 1 日を、朝から順に60 秒
職場の雰囲気は?朝礼や打ち合わせの様子をそのまま(作り込まない)30 秒
いちばん大変なことは?働く人に、大変なことと、それでも続けている理由を60 秒
残業や休みは実際どう?人事が数字で(月平均の残業、有給の取りやすさ)45 秒
選考はどう進む?応募から内定までの流れと期間45 秒
どんな人が働いている?同じ部署の 3 人に同じ質問を 1 つずつ45 秒
仕事道具や現場は?手元・機械・現場を、働く人の声と一緒に30 秒
教えてもらえる?先輩と後輩が、最初に教わったことを話す60 秒
どうしてこの会社に?中途で入った人の、前の会社との違い60 秒
福利厚生は?よく使われている制度を 1 つだけ、使った人が30 秒
説明会では何が分かる?説明会の様子と、申し込み先の案内30 秒

大変なことを話す回を、必ず入れてください。良いところだけを並べると、どの会社のアカウントも同じに見えてしまいます。求職者が SNS や動画で職場の何を確かめようとしているかは、姉妹サイトの求人票では分からない職場の雰囲気を確かめる方法に、求職者の側から書いています。

企画出しは生成 AI に手伝ってもらえる

社員に聞いた話のメモがあれば、ChatGPT や Claude で企画の下書きを作れます。社員の名前や社外に出せない情報は入れず、出てきた案は事実と合っているかを必ず人が確かめてください。

あなたは採用広報の編集者です。
次のメモは、当社(業種: 〔業種〕、
社員数: 〔人数〕)の社員に聞いた話です。

〔メモを貼る。名前は入れない〕

このメモから、就活生や転職を考える人が
「応募する前に知りたい」と思う問いを 12 個挙げ、
問いごとに 30〜60 秒のショート動画の企画を
次の形で出してください。

・答える問い
・だれが、何を話すか / 何を映すか
・最初の 2 秒で画面に出す一言
・字幕に入れる言葉

決まり:
・ダンスや流行りの型には頼らない
・大変なことを話す回を 2 本以上入れる
・メモに無い事実(数字・制度)は作らず、
  「要確認」と書く

1 回の撮影で 4 本撮れば、週 1 本は 1 人でも続く

SNS採用で私たちがいちばん避けてほしいのは、始めて数か月で投稿が止まることです。止まったアカウントは、見に来た学生に「今は採用に力を入れていない会社」と映ります。

続けるために、撮る日をまとめます。月に 1 回、2 時間ほど撮影の時間を取り、4 本分をまとめて撮る。編集と投稿は週に 1 本ずつ。これなら採用担当 1 人でも回ります。撮り方と台本の作り方は採用動画の作り方に書いたとおりで、ショートでも変わりません。

  • 字幕を必ず付ける。音を出さずに見る人がいる前提で、話している言葉を画面に出す。
  • 最初の 2 秒で、何の話かを言う(「入社 1 年目の 1 日」など)。
  • 最後に、プロフィールのリンクの先に何があるかを言う(「説明会の日程はプロフィールから」)。
  • 投稿した曜日と時間、再生数、リンクのタップ数を表に残し、月に 1 回見返す。

フォロワーが少ないうちは、Instagram のトライアルリールが使えます。フォロワー以外の人に先に見せて、約 24 時間後に再生数やいいねを確かめてから、フォロワーに出すかを決められる機能です[6]。同じ社員インタビューの切り出し方を 2 通り試す、といった使い方ができます。

運用代行に頼むかどうかは、社内に撮影に協力してくれる人がいるかで決めてください。編集や投稿は外に出せても、働く人が自分の言葉で話す場面は、会社の中にしかありません。

投稿の前に、音楽・映り込み・出演の同意・求人の正確さを確かめる

採用のアカウントでつまずきやすいのは、炎上より手前の、確認のし忘れです。投稿の前に、次を 1 本ずつ見てください。

  • 音楽: TikTok では、企業の投稿に一般の音楽ライブラリの曲は使えず、商用音楽ライブラリの曲を使う決まりです。広告だけでなく、ふだんの投稿も対象です[4]。ほかの SNS でも、流行りの曲を企業の投稿に使ってよいかは、それぞれの規約で確かめる。
  • 映り込み: 画面やホワイトボードの文字、取引先や顧客の名前、書類、社員証、窓の外の住所が分かるもの。
  • 出演の同意: 出る人に、どの SNS に、いつまで載せるかを伝え、書面かメールで同意をもらう。退職したら消すのか残すのかも、先に決めておく。
  • 求人の正確さ: 給与・残業・休日の数字が、今の求人票と合っているか。いつの時点の数字かを字幕に入れる。
  • コメントと DM: 応募者から DM で個人情報が届いたとき、だれが返し、どこに移して管理するか。

SNS の投稿も、求人の情報として扱う

職業安定法は、求人の情報を正確で最新の内容に保ち、うその表示や誤解を生む表示をしないことを企業に求めています。対象の手段には、ウェブサイトやアプリも含まれます[7]。SNS で給与や残業に触れるなら、求人票と同じ扱いと考えて、募集の内容が変わったら投稿も直すか消してください。判断に迷うときは、社会保険労務士や弁護士に相談してください。