10 月、就職サイトに並ぶ 28卒向けの秋冬のプログラムを眺めていると、大手の「5days インターンシップ」がいくつも目に入る。うちも 5 日間をやらないと、学生に会えないのではないか。インターンシップを企業側で企画する人が、この時期によく抱える迷いです。
私たちの考えを先に書きます。国の整理でインターンシップと呼べるのは 4 つの類型のうち 2 つだけで、参加した学生の情報を採用選考に使えるのは、その中でも要件を満たしたものに限られます。人も時間も少ない会社は、大手の 5days を真似るより、「1 日で会社を知ってもらう場」と「少人数でしっかり働いてもらう場」を分けて作るほうが回ります。
インターンシップの 4 類型とは。インターンシップと呼べるのはタイプ 3 と 4 だけ
2022 年 6 月、文部科学省・厚生労働省・経済産業省はインターンシップについての合意文書(いわゆる 3 省合意)を改正しました[1]。経団連と大学関係団体の代表でつくる「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」が、学生のキャリア形成を支える取り組みを 4 つの類型に分け、そのうちタイプ 3 とタイプ 4 だけをインターンシップとしたのを受けたものです。この扱いは 2025 年 3 月卒の学生から適用されていて、28卒も同じルールの上にあります[2]。
インターンシップの定義は、「学生がその仕事に就く能力が自らに備わっているかどうか(自らがその仕事で通用するかどうか)を見極めることを目的に」、専攻や将来のキャリアに関わる就業体験を行う活動、です[1]。ここでいう就業体験は、会社の実務を経験すること。説明を聞くだけのプログラムは入りません。
| 類型 | 目的 | 期間の目安 | 就業体験 | 学生情報を採用に使えるか |
|---|---|---|---|---|
| タイプ 1 オープン・カンパニー | 会社・業界の情報提供と PR | 単日 | 基本的に無い | 使えない |
| タイプ 2 キャリア教育 | 教育(大学の授業、企業の CSR のプログラムなど) | 年次を問わない | あってもなくてもよい | 使えない |
| タイプ 3 汎用的能力・専門活用型インターンシップ | 学生は自分の能力の見極め、企業は選考を視野に入れた評価材料の取得 | 汎用的能力活用型は 5 日以上、専門活用型は 2 週間以上 | 必須 | 5 つの要件を満たせば、採用活動の開始以降に使える |
| タイプ 4 高度専門型インターンシップ(試行) | 専門性の実践力の向上と評価材料の取得(博士課程のジョブ型研究インターンシップなど) | プログラムによる | 必須 | 採用活動の開始以降に使える |
表の出典は産学協議会の報告書と 3 省合意です[1][3]。中小企業が実際に選ぶのは、ほとんどがタイプ 1 かタイプ 3 になります。タイプ 4 は大学院生向けの試行で、27卒で実施した企業は 0.3% でした[6]。
よく見かける「1day インターンシップ」は、この整理ではオープン・カンパニーです。もう 1 つ、どちらにも入らないものがあります。2〜3 日の仕事体験のように、就業体験はあるがタイプ 3 の要件には届かないプログラムです。27卒向けに、こうしたプログラムを実施した企業は 20.3% ありました[6]。中身がよくても、ここで得た学生情報は採用選考に使えません。
学生情報を採用選考に使えるのは、5 つの要件を満たしたタイプ 3 を、6 月以降に
タイプ 3 として扱われるには、次の 5 つをすべて満たす必要があります[1]。
- 就業体験: 必ず就業体験を行い、実施期間の半分を超える日数を職場での就業体験に充てる(テレワークが常態化している職場ならテレワークを含む)
- 指導: 職場の社員が学生を指導し、終わったあとに学生へフィードバックする
- 期間: 汎用的能力活用型は 5 日間以上、専門活用型は 2 週間以上
- 時期: 学部 3・4 年か修士 1・2 年の長期休暇(夏休み・冬休み・入試休み・春休み)に行う
- 情報開示: 募集要項などに決められた項目を書き、ホームページなどで公表する(項目は後の節に載せます)
要件を満たしても、情報を使えるのは時期が来てからです。卒業の前の年度の 2 月末までは、取得した学生情報を広報にも選考にも使えません。使えるのは、3 月以降の広報と、6 月以降の採用選考です[1]。厚生労働省は使い方の例として、広報の開始以降なら企業説明会の案内を送ること、選考の開始以降なら選考の一部を免除することを挙げています[2]。28卒に当てはめると、広報の開始は 2027 年 3 月 1 日、選考の開始は 6 月 1 日です[4]。
例外は 1 つです。春休み以降に行う 2 週間以上の専門活用型インターンシップで、高い専門性があると判断した学生に限り、6 月より前に選考へ移れます[4]。理系の研究職などを除けば、中小企業が使う場面は多くありません。
タイプ 1 とタイプ 2 で得た情報は、時期にかかわらず採用活動に使えません[3]。ただし、学生が自分で出したエントリーシートや成績の書類に参加したことやフィードバックの内容が書いてあれば、ほかの書類と同じように扱ってかまいません[1]。産学協議会は、インターンシップは採用活動ではないので、終了時に内々定を出すことは想定しておらず、参加しなかった学生も選考にエントリーできると書いています[3]。
実際の会社の動きも見ておきます。タイプ 3・4 を実施する企業のうち、得た情報を 3 月以降の採用活動に「利用する予定がある」は 37.3%、「検討中」が 48.9% でした。参加者への優遇策で最も多かったのは「通常より早く採用選考を開始する」の 71.0% です[6]。一方で政府は 28卒向けの要請で、インターンシップなどを通じた早期の選考が就職活動の早期化と長期化につながっているとして、日程のルールを守るよう改めて求めています[5]。参加者を優遇するとしても、選考の日付はルールの中に置いてください。日程の全体は28卒の新卒採用スケジュールの記事にまとめています。
従業員 50 人未満の会社で、タイプ 3 を実施したのは 13.3%
5days をやらないと取り残される、という心配は、数字で見るとかなり小さくなります。マイナビが 2025 年 11 月に 1,282 社に聞いた調査では、28卒向けに実施を予定している類型はオープン・カンパニーが最も多く、タイプ 3 は 2 割に届きませんでした[6]。
数値を表で見る
| 類型 | 28卒の実施予定 | 27卒で実施(全体) | 27卒で実施(従業員 50 人未満) |
|---|---|---|---|
| タイプ 1 オープン・カンパニー | 48.5% | 75.4% | 57.5% |
| タイプ 2 キャリア教育 | 25.8% | 33.6% | 19.0% |
| タイプ 3 インターンシップ | 18.5% | 22.3% | 13.3% |
| タイプ 3 に当てはまらない就業体験 | 18.1% | 20.3% | 16.6% |
| タイプ 4 高度専門型 | 2.5% | 0.3% | 1.2% |
| 実施しない | - | 14.7% | 30.2% |
28卒の予定は調査の時点(2025 年 11 月)のもので、まだ決めていない会社も多く含みます。すでに終わった 27卒の実績で見ても、タイプ 3 を実施した会社は全体で 22.3%、従業員 50 人未満の会社では 13.3% でした。50 人未満の会社は、オープン・カンパニーを実施したのが 57.5%、何も実施しなかったのが 30.2% です[6]。
やらない理由もはっきりしています。タイプ 3・4 の実施で苦労している点の 1 位は「長期(5 日以上)の開催が難しい」67.2%、2 位は「現場社員の協力を得ること・人員の確保が難しい」65.7% で、「実務体験を行う仕事場・環境に学生を受け入れるのが難しい」43.2%、「受け入れ人数に限界がある」36.6% が続きました[6]。5 日以上という要件については、「実施したいが難しいと思う」と答えた会社が 34.0% あり、「既に実施している」の 24.9% より多くなっています。
3 省合意は、学生が会社の実態を知るきっかけとして、インターンシップなどの取り組みは中小企業やスタートアップにとってとくに意義が大きいと書いています[1]。私たちも同じ考えです。ただしそれは、5 日間を必ずやるべきという意味ではありません。学生に会社の中を見せる場をどう作るかの話です。
中小企業は、1 日のオープン・カンパニーと少人数の 5 日間を分けて作る
1 つのプログラムに「たくさんの学生に知ってもらう」と「数人をしっかり見る」の両方を求めると、どちらも中途半端になります。目的が違うので、分けて作ってください。
1 段目はオープン・カンパニーです。産学協議会は、学業と両立できるよう平日の夕方や夜、週末、長期休暇に開くことや、オンデマンドの動画配信などオンラインを使う工夫を求め、事業の説明、社員への質問会、職場見学などで会社と仕事の理解につながる中身にすることが重要だとしています[3]。半日で終わる長さにし、ここで得た連絡先は採用の案内には使わない前提で運営します。
2 段目が、2〜4 人の少人数で受け入れる 5 日間のタイプ 3 です。人数を絞れば、受け入れの場所と指導役の負担が小さくなります。下は、汎用的能力活用型で組むときの流れの例です。
- 1 日目: 職場に入る準備をして、半日は現場に出る
午前は会社と仕事の説明、安全のルール、指導役の社員の紹介。午後は指導役について現場に入り、1 日の流れを見る。5 日のうち半分を超える日数を職場での就業体験にするため、説明だけの日は作らない。
- 2〜4 日目: 職場で、実際の仕事の一部を受け持つ
社員の仕事から切り出した小さな仕事を任せる(例: 現場の記録づくり、問い合わせの下書き、店舗の売り場の改善案)。指導役は毎日夕方 15 分、学生と振り返る。社員と同じ量・同じ責任の仕事にはしない。
- 5 日目: 取り組んだことをまとめて、フィードバックを受ける
午前は学生が 4 日間でやったことと気づいたことを短く発表する。午後は指導役が 1 人ずつ、良かった点とこれから身につけるとよい点を伝える。
5 日を続けて取れない職場もあります。調査の自由回答には、建設会社の「連続5日ではなく、隔週で合計5日になるような日程を設定」という工夫もありました[6]。日程を分けるときも、長期休暇の中に収めること、半分を超える日数を職場で過ごすことは変わりません。
受け入れの前に、指導役の社員に「何をどこまで任せるか」と「最終日に何を伝えるか」を決めてもらってください。調査で苦労の 2 位だった現場の協力は、頼む中身が曖昧なときにいちばん得にくくなります。
募集要項の 9 項目とフィードバックの言葉は、始める前に書いておく
タイプ 3 として募集するなら、募集要項などに次の 9 項目を書き、ホームページなどで公表します[1]。学生にとっても、選ぶときの手がかりになる項目です。
- プログラムの趣旨(目的)
- 実施時期・期間、場所、募集人数、選抜方法、無給か有給か
- 就業体験の内容(受け入れる職場の情報を含む)
- 就業体験に必要な(求められる)能力
- インターンシップでのフィードバック
- 採用活動の開始以降に限り、インターンシップで得た学生情報を活用すること(活用の内容を書くのは任意)
- その年度の実施計画(時期・回数・規模)
- 過去 2〜3 年程度の実施の実績
- 採用選考活動などの実績の概要(企業が公表する場合のみ)
基準を満たすと自ら宣言したうえで、募集要項に「産学協議会基準準拠マーク」を載せることもできます[3]。
フィードバックは、点数や合否を伝える場ではありません。産学協議会は、職場の社員が学生の優れている点や、さらに身につけるとよい点を定性的に伝えるもので、定量的な評価や内々定を伝えることではないとしています[3]。指導役によって中身がばらつかないよう、型を先に渡しておくと書きやすくなります。
【最終日のフィードバック(1 人 10〜15 分)】
話す人: 5 日間指導した職場の社員
1. この 5 日間で、いちばん良かった場面
例: 「3 日目に、作業の手順を自分からメモにまとめて
翌日から見ながら進めていた。仕事を覚える速さにつながる」
2. 次に身につけるとよい点を 1 つだけ、場面とあわせて
例: 「分からないまま進めた場面が 2 回あった。
迷ったら手を止めて聞くと、やり直しが減る」
3. 学生からの質問を受ける(仕事・職場について何でも)
伝えないこと
・点数、順位、ほかの学生との比べ合い
・合否、内々定、選考の約束
・性別、家族、出身地など本人の適性と関係の無いこと
受け入れる前に確かめること
就業体験は無給が基本ですが、実態として社員と同じ業務・働き方になる場合は労働関係の法令が適用され、雇用契約を結んで有給にする必要があります[3]。現場の安全とハラスメントへの対応は受け入れる企業が責任を持ち、事故の補償は大学と事前に責任の範囲を決めておきます[1]。2026 年 10 月 1 日からは、求職者などへのセクシュアルハラスメントを防ぐための措置が、すべての事業主の義務になりました[5]。判断に迷うときは、社会保険労務士・弁護士か労働局に相談してください。
動画は、オープン・カンパニーの代わりと、5 日間の前の職場紹介に使う
人の少ない会社がインターンシップで動画を使うなら、置き場所は 2 つです。1 つは、毎回同じ説明を繰り返しているオープン・カンパニーの一部。もう 1 つは、5 日間の参加者が初日の前に見る職場紹介です。
オープン・カンパニーは、産学協議会自身がオンデマンドの動画配信を工夫の例に挙げています[3]。調査でも、「現場見学の動画を作成し、WEBでも対面同様のクオリティで現場見学会を行っている」という建設会社がありました[6]。会社と仕事の説明を動画にしておけば、当日の時間を社員への質問会や職場見学に回せ、平日の授業の後や週末に見てもらうこともできます。
5 日間の前に見せる動画は、初日の不安を減らすためのものです。調査では、参加時の服装について企業が「各自の判断」と伝えているのが最も多い一方、学生の 91.9% は企業に指定してほしいと答えていました[6]。こうした細かいことほど、指導役が自分の言葉で話すと伝わります。次の質問で 1 本 1〜2 分ずつ撮ってください。
【インターンシップの前に見る職場紹介(1 本 1〜2 分)】
話す人: 5 日間の指導役の社員
1. 自己紹介(担当している仕事と、入社して何年目か)
2. この職場の 1 日の流れ(朝来てから帰るまで)
3. 5 日間で、学生にやってもらう仕事
4. 初日の集合場所・時間、服装、持ち物、昼食
5. 困ったときは、だれに、どう声をかければよいか
撮る前に決めておくこと
・お客様の名前や社外に出せない画面・書類は映さない
・話した内容が、募集要項に書いた内容と合っているか人事が確かめる
この質問をそれぞれ短い動画に分けると、学生は気になるものから見られます。動画で採用では、撮った動画を「シーン」としてつなぎ、「服装と持ち物は?」「どんな仕事をする?」のような「選択肢」で分けると、見る人が選びながら進む動画になります。どの選択肢がよく選ばれたかが分かるので、参加者が初日の前に何を気にしているかも見えます。撮り方の手順は採用動画の作り方に、大変なことも含めて見せる考え方はRJP の記事に書きました。
学生の側からは、この 4 類型がどう見えているのか。姉妹サイトの28卒向けのインターンの選び方では、選考につながるものとつながらないものの見分け方と、5 日間で職場の何を見ればよいかを学生向けに書いています。学生が募集要項のどこを読んでいるかを知っておくと、9 項目の書き方が変わります。


